賢視点3

>ハルさんが入室しました

>ハル
こんちは!

>ナオ
こんにちは

>クリスタル
ちわっす!ハル、まってたよー!きょうはいつもよりにぎやかでいいな!!

>アナログマン
こんにちは!よかった、きょうはこれないんじゃないかと、クリスタルさんとナオさんでしんぱいしてたんですよ

>ハル
え、え、なに?おれ、そんなしんぱいされることしたっけ?

>アナログマン
あのタイミングでたいしゅつされたら、しかたないとおもいますよ?

>クリスタル
そうそう、やばいやばい、おやにばれたしぬ、とか!よばれてる、おちる、また!とか!!どこのバイオハザードだよ!!!

>ハル
ごめーん、そういやそうだった!!めっちゃおこられたんだよ!もうだいじょうぶだけど!!

>アナログマン
おやのパソコンをかってにつかってたんですか?

>ハル
うん!でんわかいせんだってしらなくて、チャットしてたら、でんわりょうきんがえらいことに・・・・・・

>クリスタル
そりゃおこられるってーいまはだいじょうぶ?

>ハル
うん、おとしだまとクリスマスプレゼントいらないからっておねがいして、でんわかいせんから、ISDNにかえてもらった!!

>クリスタル
おー、おめでとう!!

>アナログマン
おめでとうございます。おおみそかなのに、チャットにさんかしていただき、ありがとうございます。ナオさんもはじめてなのに、ようこそおこしくださいました

>ハル
あ、そういえばあいさつまだでしたね、すいません!!おれはハルっていいます!はじめまして!!!

>ナオ
こっちでははじめまして、ハルさん。いろいろたいへんだったみたいですね。きょうはよろしくおねがいします

>ハル
うん、こちらこそー!っておまえかーい!しょたいめんなはんのうするなよ、ふつうにしょたいめんのひとかとおもったよ!!

>クリスタル
あはははははっ、ハルのしょうかいできてくれたナオさんのほうがはやいとか!!ふつう、かいさいじかんにはまっててあげるのがふつうだろ、ハルー!ナオさんはチャットはじまってすぐきてくれたんだぞー

>アナログマン
いろいろおもしろいはなしをきかせていただきましたよ、ハルさんの

>ハル
え、ちょ、なにやってんだよ、ナオーっ!!

>ナオ
ハルのともだちのともだちどうしなんですよ?ぼくたち?はなすことって、ハルのことしかないですよね?

>クリスタル
たしかに!!

>ハル
そりゃそうだけどさあー!

>アナログマン
まあまあ、そのへんにしておきましょう。ハルさんとナオさんは、リアルでケンカしないようにしてくださいね?そういえば、クリスタルさんとハルさんは、なつごろのじけん、おぼえてますか?

>クリスタル
おぼえてるよ!とつぜんじしんとかがあったやつでしょ?まちがメチャクチャになっちゃってさ・・・・・・

>ハル
しってる!でもあれってじしんなの?ウチのおやはテロリストだっていってたよ?

>ナオ
ぼくもしってます

>アナログマン
それがですね・・・・・・あれはデジモンのせいだっていうヤツがいるんですよ

>ハル
デジモン?なんだそりゃ?

>クリスタル
それとも、ばくだんのなまえ?じけんのはんにんのなまえとか?

>ナオ
なんですか、それ?

>アナログマン
デジタルモンスター、りゃくしてデジモンっていうそうです。ネットのなかでいきているモンスターらしくて、ネットのデータをとりこんで、いろんなすがたをしてるらしいですよ

>ハル
マジ!?ほんきなの、そいつ?

>ナオ
え、それほんとですか!?アナログマンさん、それをどこで?!

>クリスタル
で、で、で、そいつなんていうの?ゆうめいなオタッキーなのかね?

>アナログマン
えっとですね・・・・・・なまえはたしかタイチっていったかな?

>ナオ
タイチってやつからきいたんですか?

>ジーニアスさんがにゅうしつしました

>ジーニアス
はじめまして、ジーニアスといいます。よろしくおねがいします

>アナログマン
はじめまして、ジーニアスさん。ここのチャットははじめてですよね?かんりにんのアナログマンといいます!よろしくおねがいします!

>クリスタル
はじめましてー、ジーニアスさん。クリスタルです!よろしくおねがいしまーす

>ナオ
はじめまして、ジーニアスさん。ナオです。よろしくおねがいします

>ハル
あ、やっときた!こっちでははじめましてー!ハルでーす、よろしく!

>ジーニアス
こちらこそよろしくおねがいします、アナログマンさん、クリスタルさん。ハルさん、こっちでははじめましてですね!おねがいします!
えーっと、ナオさんは、あれですよね?こんにちは!

>ハル
なんでわかるんだよ、ジーニアス!!おれだまされたのに!!

>ジーニアス
むしろ、なんでわかんないんですか、ハルさん

>ナオ
ほんとですよ、ハルさん

>ハル
おまえらいいかげんにしろー!

>アナログマン
ああハルさんがすっかりいじられキャラに・・・・・・リアルでどういうかんじなのか、わかったきがしますね

>クリスタル
え、ジーニアスさんもハルのしりあい?!すっげー、ふたりもつれてきてくれたのかー、きょうはもりあがりそうだなー!

>ハル
うん、そうなんだよ。アナログマンさんがおっけーくれたからさ、しょうかいしたんだ

>クリスタル
へー、そうなんだ!きょうはたのしくなりそうだな!!

>ジーニアス
きょうはよろしくおねがいします

>アナログマン
ここはみんながたのしく、かいわがモットーなので、なかよくしてくれるひとなら、だいかんげいですよ!










ありがとうございます、と打ち込もうとしたら、突然部屋が真っ暗になってしまった。


「きゃー、なに、て、停電っ!?」


リビングからお母さんの声が聞こえてくる。大丈夫か、賢、とお父さんが僕を呼ぶ声がする。真っ暗なせいで身動きが取れない僕は、椅子に座ったままでいるしかなかった。


「うん、大丈夫だよ。でも真っ暗で良く見えないよ、ブレーカーでもおちたの?」

「わ、わからないわ。でも危ないから、賢ちゃんはそのまま動かないでね」

「たしかライトがあったと思うから、捜してみるよ。ブレーカー確認してくるから、キミもここにいるのだ」

「わ、わかったわ。気を付けてね、あなた」


わかったー、と大声でお父さんに返事をした僕は、勉強机に手を伸ばす。その先にはカーテンがあった。だから手探りで布を掴んだ僕は、思いっきりカーテンをひいてやる。しゃっという音と共に、カーテンは開かれた。その先に広がる月明かり。大晦日の夜。いつもなら年越しする家族で明るいマンション群は、こちらと同じように真っ暗だ。カーテンの隙間から見えるはずの光すらない。シルエットすら映らない暗闇がある。蛍光灯、通路を照らす明かりすらない。通りを行きかう車の明かりだけが通り過ぎていく。それも信号機や掲示板が故障しているのか、少しずつ渋滞が出来始めているのがみえた。どうやら停電のようだ。


おかしいな、と思う。あまりにも突然の停電だ。原因がわからない。ただ、月明かりがいつもより、いちだんと輝いていた。放っておいたら、停電は復旧するだろう。いつになるかはわからないけれど。あーあ、と僕は真っ暗なパソコンのまえでうなだれた。
せっかく、治兄さん、遼さん、そして遼さんのネットのトモダチと楽しくチャットが出来ると思っていたのに。よりによって、このタイミングで停電だなんて。


停電はパソコンにとって天敵だ。雷が落ちなかっただけましかもしれない。でも、適切な終了段階を踏まないで、主電源をきるのと同じくらいの暴挙だ。最悪、パソコンの中のプログラムがいくつか、吹っ飛んでいることを覚悟しないとだめだ。バックアップはあるけど、復旧作業は骨が折れるに違いない。もしかしたら、これで年越しかもしれない、なんて思いながら、僕はお父さんたちを待った。


そのときだ。


突然、パソコンのディスプレイが白く発光を始めたのは。ショートでもしたのじゃないかって思わず血の気が引いたけど、ちがった。四角い画面だけが、真っ白に発光している。停電しているにも関わらず、パソコンが起動している。停電が収まったのかと思ったけど、相変わらず僕の部屋も窓の向こうの世界も暗いママだ。目の前のディスプレイだけが、僕を明るく照らしている。
どうやらさっきまでやっていた、チャット画面のようだ。アナログマンさんのすぐ下に、文字化けした知らない名前が文字を投下していた。





>kaixncilwj;l/djm
ケン!ヤットミツケタ!!


僕は血の気が引いた。なんでこいつは僕の名前を知っているのだ。僕はハンドルネームを名乗っていて、治兄さんと遼さんしか知らないはずなのに。心霊現象を目撃してしまい、身動きが取れない僕をしりめに、そいつはどんどん言葉を書きこんでいく。


>ndiuwoudjcios;
ボクタチヲタスケテ

>ksjiukgfbhksl;k
エラバレシコドモタチモ
パートナータチモミンナツカマッテ・・・・・・

>dnhcsknuio;skx,m;l
タスケテ・・・・・・

>,ksmnfcliow;koaaa
ボクタチヲタスケテ!!!


>mncjhwsklfnmucioasp
ボクハココニイルヨ!!!!


凄まじい光が放たれた。あまりにもまぶしくて僕は目を瞑った。すると、ごとんっていう音がして、その光は収まった。おそるおそる目を開けてみると、ディスプレイに照らされている、へんな機械が置いてあった。


>kcnmsriflhniwssa
ソレニサワッテ!

>kjncieu.mkla,l;a,l
ソノデジヴァイス二
サワッテボクタチノセカイニキテ!!!


「な、なんだろう、これ。デジヴァイスって、これのことかな?」


おそるおそる手に取ったはいいものの、必死で助けを求めてくる正体不明の誰かは、えんえんと僕に向かってメッセージを送り続けている。恐ろしい程の投稿速度だ。まるで喋っているのと同じくらいのスピードだ。治兄さんも恐ろしくタイピングが早い人だったけど、
ブラインドタッチしたって、ここまで早い人はなかなかいないだろう。チャットは文字を打ち込んで、投稿ボタンを押したら、反映されるまで時間がかかる。どうしてもリアルタイムで登校するにはラグが生じる。パソコンのスペックによって。何より恐ろしいのは、IPもハンドルネームもパスワードもすべてが文字化けして、投稿されるたびに匿名化されているはずの英数字が変わっていることだ。
一体何で投稿したらこんなことになるのか、僕にはわからなかった。


>mncdjsl;jipeo@.p
ミンナツカマッテイルンダ!!

>cjnhiuslox;jkipak
ケンノチカラガヒツヨウナンダ!!!

>nmcjsdifhncoa;koa
デジヴァイスヲディスプレイ二カザシテ!!
デジタルゲートヲヒラクカラ!!!


最後の言葉に気付いたのは、持て余していたデジヴァイスの画面に表示された英文に気付いて、それを読もうと、唯一の光源にデジヴァイスをかざしたあとだった。

DIGITAL GATE OPEN
WELCOME TO DIGIMONWORLD

デジヴァイスはそう表示した。世界は暗転する。


「ブレーカー上げたけどだめだわ」

「停電みたいだ」

「賢ちゃん、こっちにいらっしゃい」


子供部屋をノックする二人の声がどんどん遠ざかっていった。


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