クロノモンを追いかけている途中、タイチたちはかつてデーモン軍の総司令官だったエテモンキーと遭遇した。デーモン城に入るために必要なタグをすべてタイチに奪われ、敗戦を重ねたことでいつしか姿を見せなくなっていたのだ。
「雪辱を晴らしに来たのか!こんなときに!」
ゼロマルは叫ぶ。今はそれどころではないと。
「わかってるぜ!だから俺様がお前らに情報提供しにきたって寸法よ」
「はあっ!?」
「ジュンには命を救われたんだ。罰として処刑されそうになった俺を助けてくれた。どさくさに紛れて逃がしてくれたんだ。そんなジュンがピンチだってんだ、助けに行かなきゃ男が廃るだるぉ?」
「エテモンキー......」
エテモンキーがタイチにもたらしたのはデーモン軍の内部告発ともいうべき重要な情報だった。
まずはとうとう超究極体が誕生してしまった。超究極体、世界の生態系のバランスを崩すほどの能力を持ち、通常の進化で育った場合、人間には制御不可能な怪物になるという存在。通常の進化で超究極体に達することが出来るのはその復活したデジモンのみだが、デーモンは他の究極体の魔王型デジモンの他、そいつを吸収することでこの進化体へと到達するつもりであること。
その復活した超究極体は、タイチのような人間がテイマーとして育成を任され、なおかつそのテイマーがエテモンキーの後任としてデーモン軍の総司令官に総司令になったこと。
「人間が!?」
「デーモンのやつ、ジュンだけじゃなくて他のやつまで無理やり召喚したのか!」
「いや、違う。そいつは自分から進んでデーモンに協力する気だぜ、タイチ」
タイチたちに衝撃が走った。エテモンキーはいうのだ。
「タイチくらいのテイマーだったぜ。たしか......名前は、彩羽 ネオ(さいば ネオ)」
「彩羽 ネオっ!?う、うそだろ、ホントにか!?ネオが!?なんでだよ!」
タイチは明らかに取り乱している。
「知ってるのか、タイチ?」
ゼロマルの問いかけにタイチはうなずいた。
「ネオは...... 彩羽 ネオは、俺の世界のD1グランプリで......デジモンバトルの大会で負け知らずのチャンピオンなんだ」
「えっ、つまり、タイチの世界で一番強いテイマーってことか?」
「ああ。でもなんで......なんでネオが......?ホーリーエンジェモンが呼ぶなら俺だけじゃなくてネオも呼ぶべきだったのに、なんでデーモンなんかに......!なにかの間違いじゃないのか?エテモンキー」
「いや、間違いないぜ。俺様はネオに殺されかけたんだからな」
「なっ」
エテモンキーはいうのだ。ネオが育てていたデジモンに粛清されかけ、そこをジュンに助けられたのだと。
タイチは信じたくない様子だが、やはりデーモンによって超究極体育成のため召喚された黒いデジヴァイス01を持つ天才テイマーなのは間違いなさそうだ。
現実世界では圧倒的で無敗を誇る凄腕のテイマーだったが、タイチと引き分けたことを屈辱としていたという。だから引き受けたのではないかとエテモンキーはいう。タイチに勝つことに執着しているのではないかと。
普段は冷静沈着な性格しているが、徹底した非情にして冷酷な合理主義者でパートナーの心理には見向きもせず、自分を邪魔する者達を平気で消している。
現実世界を憎み屈折した形で理想郷を作り上げようとデーモンを利用して超究極体を育成しているという。
「デーモンてたしか、感情に干渉して洗脳できたよな?まさか、ネオも?」
「誘導されてるってことか......」
「なるほど、ジュンと違って精神に干渉してもデジモンに影響受ける訳では無いからか」
「それだけじゃねえ。デーモンはさらにテイマーを呼びやがった」
「なッ!?」
エテモンキー曰く、ネオが超究極体の育成に専念するためにデーモンが呼び出した3人のテイマーがいるという。ネオの思想に賛同する、ネオの分身(エイリアス)の如き存在、タイチくらいの少年少女たちだという。いずれも究極体を操り、いずれタイチ達の前に立ち塞がることになるだろうとのこと。
「みんな、究極体......!」
まだ完全体であるゼロマルは息を飲んだ。
エテモンキーが教えてくれたメンバーは以下の通りだ。
まずはシグマ。常に仮面を被っていて、会話はキーボードと襟のスピーカーを使って行っている。相手のコマンドを全て把握できる仮面広場(マスクズ・スクエアー)で苦しめるピエモンの使い手。
次は豪徳寺 マリ(ごうとくじ マリ)。
ネットアイドル。猫をかぶっている策士。
そして、藤本 秀人(ふじもと ヒデト)
。デジヴァイス01を2つ所持し「無限ジョグレス」が出来る。は秀人のパートナーはウォーグレイモンのオーグとメタルガルルモンのメルーガのジョグレス体。
「まさか、オメガモン?!」
「そうだ、あのオメガモンだ」
「ま、まじかよ......究極体ばっかだな......しかも桁違いの強さだ」
「クロノモンも超究極体のプロトタイプだったらしいからな、一筋縄では行かねーぞ」
タイチたちは息を飲んだのだった。