6話

大輔たちは人造テイマーたちが拠点を構える場所にたどり着いた。そこではまさに今、ミレニアモンが完成したところだった。キメラモンとムゲンドラモンが人工的にジョグレスしたところだ。たくさんのチューブに繋がれており、目に光はないが起動まで時間が無いだろう。

大輔たちはどうしてミレニアモンに侵略されているこの世界で手下がまたミレニアモンを作っているのかよくわからなくて困惑する。

「そこまでだ!」

大輔の言葉に少年は振り返った。京くらいの少年にみんな驚くのだ。もっとロボットみたいなものかと思ったら人間と何ら変わらない存在がそこにいる。全身黒づくめにサングラスをしているものだから黒髪なことしかわからない。

「そうか、この世界の僕は遼さん以外に仲間がいたんだな。もう大輔たちに会えたのか。うらやましい。だがやることは変わらない。次こそは」

「待てよ!」

「また僕の前に立ちふさがるのか、本宮大輔」

「だれだよ!」

「ずいぶんと小さいが......ああ、まだ2000年なのか。こちらの世界ではまだミレニアモンとの決戦はこれかららしいな」

「なにいってるの?」

「僕達のこと知ってるみたいですね」

「もしかして、平行世界の選ばれし子供の誰かをそっくりそのままコピーしてるってこと!?」

「これは予言だ、本宮大輔。お前の大切な人がいなくなるだろう。だがお前はなにもできないまま時間だけがすぎていくのだ。これから僕が味わった孤独に苛まれるがいい。そして後悔するんだ。僕の手をとっておけばよかったとな」

カイザーを名乗った少年はサングラスを外した。

「兄さん?いや、ちがう......僕?」

「もう1人の賢君がいる!」

「どういうこと?」

カイザーは笑うのだ。

「あの時は暗黒の力に染まったデジモンのパーツを使ったが今度こそ成功してみせる!これで僕は過去のデジタルワールドに飛ばされてしまった仲間を助けることができるのだ」

「仲間?」

「えっ」

「助け?え、どういうことなの?」

人工的にデジモンをつくる未来があることをポキュパモンから聞いていた選ばれし子供たちはそれ自体に忌避はない。ミレニアモンという世界を危機に陥れたデジモンなのが問題なのである。だからこそカイザーの口にした悲願、目的があまりにも予想外でみんな驚くのだ。

「僕の仲間はミレニアモンとの戦いの果てに行方不明になった。エージェントたちは彼の行方が見つけられず、僕は気づいた。過去に飛ばされたのだと。予言の書に仲間の名前が書いてあるからだ。ならば時間を超えるしかない。今のデジタルワールドのサーバではない、古代デジタルワールドのENIACが統治していたころのデジタルワールドへ!」

「ねえ、君の仲間は帰って来なかったの?」

「本宮大輔たちに止められたから頓挫だ。暗黒の力に記憶を奪われた僕はなにひとつ覚えていないのだ。なにせその記憶こそが僕だからな!」

「なんでミレニアモンなの?」

「どうして仲間が過去に飛ばされたことがわかるのよ?」

「わかるさ。ミレニアモンが死ぬ間際に暗黒の球体を仲間に発射したとき、とっさにかばったからな。おかげで僕はミレニアモンの考えていることがわかるようになった」

「なんだって!?」

「過去のデジタルワールドにとばされたことをミレニアモンは理解している。なぜならそれは」

「それ以上は不要だ。感謝するぞ、カイザー。よくぞここまで私の思い通りに動いてくれた」

いきなりミレニアモンの目が赤く発光する。

「ばかな!暗黒の力もミレニアモンの力にも汚染されていないパーツで作り上げたはずのミレニアモンだぞ!なぜお前の管理下におかれるんだ!」

「決まっているだろう。いくらパーツが汚染されていないとしても、カイザー、お前の器自体は私が用意したものだ。私の影響をうけて汚染されるに決まっているだろう。お前は一乗寺賢ではない、カイザーとしての記憶を私が奪って形にしたただの人形にすぎないのだから!」

突如空間が歪み、その向こう側からミレニアモンが出現した。

「これで私はさらに強くなることが出来る!」

大輔たちは見ていることしかできなかった。ミレニアモンとミレニアモンが融合していくではないか。オメガモンと同じ、究極体同士がジョグレスして誕生したミレニアモンが、さらにジョグレスしていくではないか。超究極体の先にある世代を大輔たちは知らない。未来の知識があるジュンも知らない。前例が存在しないからだ。

「結晶体?」

それはある意味で予想外の姿だった。見上げるほど巨大な黒い水晶の中になにかが揺らめいていて、時折赤い目がこちらをみつめているのがみえる。あまりにもシンプルなデジモンだった。

「我が名はムーン=ミレニアモン!」

新たなる邪神が自らの名を宣言したと同時に世界が裂けた。足場がなくなってしまった大輔たちは落下する。様々な色がとけあい、分離しあい、奇妙なマーブル模様が充満している異様な空間だった。

「ようこそ、我が領域へ。ここはミレニアモンの内面世界だ。なにせ私はホメオスタシスのように実体をもたない精神体のデジモンなのだ」

その言葉に大輔たちは目を見開くのだ。

「まさか、ミレニアモンの心そのものがデジモンだとか言わないでしょうね!?」

「ふふふ、さすがだな。お前なら気づいてくれると思っていたぞ、本宮ジュン。だが、なにをそんなに驚いているのだ?アポカリモンの残留思念をパートナーにもっていながら、アポカリモンに取り込まれたデジモンの心がデジモンになったのを目撃していながら、なにを?」

「それは……」

ムーン=ミレニアモンの姿がかわる。笑っているのだろうか、焚き火のような揺らめきがある影が黒い水晶の中できらめいた。

ムーン=ミレニアモンのいうとおり、ミレニアモンの闇の心がデジモンとなっている為、固定の姿形を持っていないらしい。

もしかしたら、クリスタルの姿は基本的な姿にすぎず、敵に対する憎しみや怒りで、その形は変わるのかもしれない。

「ジュンに近づくな」

ベルフェモンの巨大など爪が空間を切り刻み、内側から外の世界が一瞬見えるようになるがすぐに塞がってしまう。そして狙ったはずのムーン=ミレニアモン自体は通り抜けてしまい、無傷である。

「嘘でしょ!」

「精神体だから実体を持たないのかな」

「あらゆる物理的な攻撃を受け付けないってこと!?どうやって倒すの!?」

「困ったわね。ムーン=ミレニアモンを倒すには、本体であるミレニアモンを倒すことがまず必要みたいだけど、倒れた本体から分離し時間と空間を超えて復活してるみたいだわ」

「そんな!」

ムーン=ミレニアモンは高笑いした。

「そう、だからこそ出現する世界に私は私をまずは作らなければならないのだ」

「なるほど、そんなに遼さんに会いたいのか」

「なに?」

「お前、いってたよな。遼さんは平行世界の自分と同じ存在だと。だから死んでもすぐに生まれ変わるし、どこにいるかわかるし、過去のデジタルワールドにいるとわかると」

一瞬空気が凍った。

「えっ」

「それって」

「まさか、ミレニアモンと遼さんは」

「余計なことをいうな。私にあるのは秋山遼、デジタルワールド、選ばれし子供たちへの復讐だけだ。だからこそ死してなお私は復活して新たなる進化の道を進むのだ!」

ムーン=ミレニアモンの黒い水晶がひかった。

「お前はもう不要だ。デスクリスタル」

大輔達は何が起こったのかわからなかった。カイザーの体から半透明なカイザーが現れたかと思うと、半透明なカイザーが一瞬でズタズタに引き裂かれたのだ。

「次は貴様だ!」

「大輔、あぶない!」

ジュンは大輔を突き飛ばした。

「お姉ちゃん!」

「ジュンに触るな」

ベルフェモンがジュンをかかえて空を飛ぶ。

「タイムアンリミテッド」

ムーン=ミレニアモンが発動した亜空間にジュンは飲み込まれてしまった。

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