8話

「大輔、大輔、大丈夫か!」

フレイドラモンにゆり起こされ、大輔は目を覚ました。

「よかった!」

「......えっと......」

「地下鉄、止められたよ」

「ほんと!?」

大輔は飛び起きる。どうやらフレイドラモンが運んでくれたようで、見るも無残な地下鉄の車両が前に鎮座している。振り返ってみれば数百メートル先には駅が見えていた。大輔が乗り換える予定だった駅だ。青ざめた大輔だったがフレイドラモンは首を振った。

「黒い風があっちにいっただろ?」

「うん」

「大輔のお父さんと同じだよ、駅にいた人、一人残らず消えちゃってる。誰もいないんだ。バレなくてよかったけど、はやくウェンディモン止めないとまずいよ」

「えっ......」

「いってみればわかるよ」

フレイドラモンが大輔をかかえて線路を走り抜ける。駅舎までジャンプすると静まり返っている地下鉄が広がっていた。

「うそ......だって、アメリカはずっとやってるのに......24時間なのに......」

「えっ、そうなのか?」

「うん。お父さんの友達がいってた。工事とかも地下鉄走らせながらやってるって......なのに、みんないない......ウェンディモンが連れてっちゃった......」

フレイドラモンは目を丸くした。

「どうしよう、ここから乗り換えだったのに......このままじゃパトカーとか来ちゃうよ」

「パトカー?」

「悪い人を捕まえる人。伊織のお父さんみたいにすっごい強い人」

「大変じゃないか、はやく逃げなきゃ」

「でも、僕、どうやってサマーメモリーズにいったらいいかわかんないよ......」

「じゃあ、聞いてみたらいいんじゃないか?」

「え?」

「ケイトっておばあちゃん。大輔いってたじゃないか、友達だって。大輔たちを待ってるんだろ、駅で」

「あ、そっか!」

「大輔のお父さんが貸してくれた電話があるんだから、頑張ろう大輔」

「うん」

大輔は乗り換え予定だった駅から脱出して、人気がない場所までいくとフレイドラモンに抱えられてビルの最上階に到達する。スパイダーマンみたいにジャンプを繰り返しながらいくのは怖かったが下ろしてもらえた先で見える気色は綺麗だった。

大輔はパソコンを起動して、ゲンナイさんたちに連絡をいれる。フレイドラモンに説明を任せて、ケイトに連絡をいれてみた。

父親でも母親でもなく、ウォレスの両親でもない、大輔が出たからケイトは驚いたようだ。電話の向こう側でぴこぴこぴこぴこ、ぴこぴこぴこぴこ、というアラームがずっと鳴っていることが気になって気になって仕方ない。

気をつけて、と大輔は今自分が置かれている状況について説明した。

「ああ、なんてこと!チョコモン!」

ケイトは明らかに狼狽していた。

「私のせいだわ!私がデジタルゲートがあいてることをデジタルワールドに教えたせいで!」

「えっ」

「デジタマが私の家のパソコンから出てきたのは私が冒険したときにつかったデジタルゲートが空いてしまったからなの!迷子なら迎えに来てもらうつもりだったのに!」

大輔は目を丸くした。チョコモンがいなくなったのはケイトのせいだというのだ。

「だから......なのね」

ケイトの家にはたくさんの写真があるのだが、その中にたったら1枚だけ若い頃のケイトがうつった写真があるらしいのだ。先代の子供たちと撮影に30分もかかった写真が。主税の友人が襲われたのもチョコモンがその写真をこっそり見たからだろうとケイトは教えてくれた。ウォレスが大輔に見せてくれたものの中にあったような気がする。一番いい額に入れられていた。あの時はただの劇かなにかの打ち上げの写真だと思っていたのだが、違ったようだ。あれこそが先代の選ばれし子供たちだったのだ。

「お願いよ、大輔!チョコモンを止めてち」

大輔は顔を引き攣らせた。電話の向こう側から、かえりたい、かえりたい、という声がこだましているからだ。そしてケイトの悲鳴が聞こえてきて、なにも聞こえなくなってしまった。

「大変、大変、大変だよ、ゲンナイさん!フレイドラモン!ケイトおばあちゃんまでっ!」

大輔はあわててノートパソコンに向かった。

「そうだ、ウォレスにも知らせなきゃ!」

大輔は父親の携帯電話を使ってケイトがたったいまチョコモンに襲われていなくなったことをメールする。

「大輔!サマーメモリーズに急ごう!」

「でもどこかわかんないよ!?」

あわてる大輔にパソコンの向こう側からゲンナイさんが声をかける。

「サマーメモリーズ、もしやここか?」

表示されたのは上空からの写真だ。

「これこれ、これだよ、ゲンナイさん!ここに柵があって、赤い屋根のおっきな家があって、隣にたくさん農業の機械が置いてある車庫があって!これ、なに!?」

「これは衛星写真じゃ」

「衛星写真?」

「うむ。ちょいとばかりアメリカの人工衛星のコンピュータの撮影機能を貸してもらったんじゃ。これは人工衛星を利用して上空から撮影した写真じゃよ。天気予報で日本の上にある雲を見た事があるじゃろう?あれじゃよ」

「すごい!すごいですね、ゲンナイさん!」

「こんな短時間に!」

「ミセスマクナルティまで行方不明になってしまったんじゃ。四聖獣さままで退化してしまったらデジタルワールドの危機じゃからな、緊急事態じゃよ。いつもはこんなことできん」

ゲンナイさんはアメリカの地図と照合し、だいたいの方向を確認した。

「よし、京、伊織。おそらくサマーメモリーズにウェンディモンはおるはずじゃ。大輔と共にただちに急行してくれ!」

はい、と3人はうなずいた。ジュンのノートパソコンから京たちがデジタルゲートをくぐって現れる。

「大輔たちを妨害するために一般人まで巻き込み始めておる以上、交通機関はもう頼れんからな。デジモンに乗って移動するんじゃ。人工衛星や飛行機からはなんとか映らんようにワシらが手を回すから心配いらん。頼んだぞ!」

フレイドラモンはアーマー進化をとき、ブイモンに戻る。

「よし、京さん、いきますよ!」

「うん、お願いねホークモン!」

京のディーターミナルから愛情のデジメンタルがホークモンにダウンロードされ、ホルスモンが出現した。

「アルマジモン、いくよ」

「いくでー!」

アルマジモンが光に包まれる。伊織のディーターミナルの“愛情のデジメンタル”のパワーによって進化した鋼鉄の翼を持つアーマー体の翼竜型デジモンが現れた。プテラノモンというそうだ。

「蒼い爆撃機」の異名を持ち、空を飛べるデジモンの中で最も高い高度で飛行することができ、姿を見せずに敵をピンポイント爆撃することができる。視力も優れており、高度1万メートル上空からでも、敵の姿を捉えることが可能だ。必殺技の『ビークピアス』は上空から垂直落下し、その鋭い鼻先で敵を射抜く技で、どんなに厚い装甲でも貫き、正確無比に敵のデジコアを破壊する。

「よし、急ごう大輔。ウェンディモンを止めなきゃいけない!」

「うん!」

大輔のディーターミナルから飛行能力があり大輔を連れて行けるアーマー進化が選択される。それは光のデジメンタルだった。

「......えっ」

「どうしたんだ、大輔?」

「ガーゴモン......ガーゴモンて古代種だったんだ」

「えっ、知ってるのか?」

「うん、お姉ちゃんのパートナーのファスコモンはうまれかわる前ガーゴモンだったんだ」

「へえ、そうなのか。でもたぶんそれはウィルス種のガーゴモンだよ。オレはフリー種だ。きっと御先祖なんだよ、オレが」

「そっか、古代種って昔のデジモンなんだっけ」

「うん」

大輔は少しほっとしたように笑った。ガーゴモンがいいやつなのはよく知っているし、ブイモンがガーゴモンにアーマー進化できるのならこれ以上心強く感じたのである。

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