ゆく年、くる年


「よいお年をー」
「よいお年をー」
「……ふう、最後のお客さん帰ったな」
「店仕舞いスか! 先輩!」
「ああ、軽く片付けして……つーか何だよ、そのノリ……」
「何となく」
「何となくって……」
「佐伯くんは珊瑚礁の先輩だしね!」
「まあな、何年珊瑚礁にいると思ってんだ。手伝いの頃から数えると相当だぞ」
「だよね! 今年こそ佐伯くんを負かしたかったけど、やっぱりまだまだだったよ。残念」
「甘い。俺に勝とうなんて、100年早い」
「うん、いつか勝てるように頑張るよ!」
「せいぜい頑張れ。ほら、早く片付けするぞ」
「うん! あ、そうだ」
「何だよ、まだ何か……」
「今年も大変お世話になりました、“先輩”」
「………………」
「一年間、いろいろ頑張ったけど……でも振り返ってみると、アルバイトを一番頑張った気がするよ。だから……たくさんお世話になりました。気づかなかったけど、わたしたち、多分たくさん一緒にいたよね」
「…………い、いっしょ、って……」
「佐伯くん?」
「別に、仕事で一緒だっただけだろ。特別な意味なんか、無いだろ」
「うん、お仕事頑張ったよね」
「ああ、仕事だよ。あくまで」
「うん、お陰さまで沢山稼がせて頂きました。お陰で高校生には買えそうもないものが買えたよ、ありがとう」
「……無駄遣いじゃないだろうな、このカピバラ娘」
「……お父さん、顔が怖いよ……」
「コラ、お父さんに教えなさい。何を買って無駄遣いしたんだ?」
「な、内緒!」
「内緒ってことは、間違いなく無駄遣いだろ……」
「違うよ! あとで! あとで、教えるから!」
「あとでっていつだよ?」
「そ、それも内緒! お願い、あとでちゃんと教えるから……ね?」
「………………しょ、しょうがないな。あとで報告、忘れんなよ?」
「うん、約束するね」
「なら、まあ、よし」
「えへへ、ありがとう!」
「……(上目づかいで「……ね?」はズルイだろ……)」
「あ、そうだ」
「何だよ? いい加減、片付け……」
「来年も宜しくね、佐伯くん」
「………………」
「来年こそ、負けないんだからね!」
「バイトで、だろ。つーか、100年早い」
「来年になっても、100年早いの?」
「いつになっても、だよ。俺に勝てる訳ないだろ」
「そんなこと、ないよ!」
「あるよ。まあでも……頑張りは認めてやらないでも、無い」
「ホントっ?」
「まあな」
「やったー!」
「来年もこの調子で頑張れ」
「うん、頑張るね! 来年も宜しくお願いします、先輩!」
「ああ、宜しくな」


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*なかなか片付けられないバカップルたち。
*晴れ着を自力で購入する高校生って本気凄いよね。
*みなさま、よいお年を。今年も大変お世話になりました。

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