(*公式さんの某S伯氏の某ウィンクネタ) (*若干パラレル設定と思わなくもない……すみませんです) 画面には、色とりどりの風船を持った有名モデルがいて、その隣には、鮮やかすぎるピンク色の開襟シャツ(胸元にはドクロマーク)を着た強面の男がホットドッグを差し出すようにしている。二人の後ろにはドクロマークの顔をしたクマのヌイグルミを持った長めの金髪の男……頭にヌイグルミとお揃いの付け耳をしていて、どう考えてもミスマッチのはずなのに、何故かしっくり似合っているような気もしなくもない。その隣には―― 「瑛くん、ウィンクができるんだ! すごいね〜」 やけにふわふわした口調で言われた。あかりはパソコン画面の付け耳男の隣を指さしている。何故か宣伝用にとセッティングされた写真の中では、何故かクレープを持たされた上、あかりが言ったように何故か片目を閉じた自分がいる。本当に、何故か。 「……別にすごかないよ。誰でもできるだろ、それくらい」 というか、これを見てつっこむところはそこなのだろうか。違う気がする。 そうかなあ、とあかりが首を傾げる。 「そうだよ」 「でも、できる気がしないよ?」 「簡単だろ。ほら」 「!!」 実際にやってみせたら、目を輝かせた。子供みたいだ。途端に息巻いてはしゃぐように言う。 「わたしもできるかな!?」 「うん、やってみなさい。お父さん見ててやるから」 「うん!」 やけに元気よく頷いて、一歩下がって、軽く息を整える。 「じゃあ、いくね」 「おう」 そうして自信満々目を閉じて見せた。両目を。 あかりが得意げに尋ねてくる。 「どう!?」 「できてない。両目閉じてる」 あかりは首を傾げて「あれれ、おかしいな」と呟いて、もう一度目を閉じて見せた。ちなみに両目を。 今度は少し不安げに訊いてくる。 「……こう?」 「できてない」 三度目は少し混乱したような声で目を閉じた。 「こ、こう?」 「うん、両目閉じてる」 四度目は、もう半疑問系というか、ほとんどヤケだった。 「こう!?」 ――うん、バッチリ両目閉じてる。全部綺麗に両目を閉じていた。知ってるか。そういうのウィンクじゃなくて、まばたきって言うんだぞ。 あかりに「できてないよ」と言って「こんなこともできないのか、おまえは」なんて、少しからかってやろうと思った。 けど、そこで気がついた。 あかりは相変わらず、ウィンクをするつもりでパチパチとただのまばたきを繰り返している。きゅっと瞼を閉じて、“どう?”とばかりに軽く小首を傾げてみせる。白い頬の上に睫毛の影が落ちていた。綺麗な弧を描いていて、案外長い。目を閉じて、桜色の唇が半開きで、つまり、その、おそろしく無防備だった。もしかしてもしかしなくとも、今この瞬間なら、何をしても気がつかないんじゃないか――――魔が差しそうになって、思わず手が滑った。 「痛っ!」 あかりがチョップされた頭の天辺を押さえてうめく。 「う、ウィンクができないからって、チョップするなんてひどいよ!」 割と本気で痛そうにしている様子を見たらさすがに罪悪感が沸いた。――手が滑った。思わず。誘惑に負けそうで。 気をつけないと余計なことを言いそうで、咳払いをしてごまかした。 「……と、とにかく、そのまばたきをやめろ!」 「まばたきじゃないよ! ウィンクだよ!」 「できてないだろ!」 「そっ、それはそうかもしれないけど……」 自覚はできてるらしい。 「うーん……分かった。練習する」 「……それは……ちょっと……」 「?」 いや、見てみたい気もするけど、できるようになったところで、誰に見せるつもりなんだ、とか、そういうどうしようもないことが気になるし、できるようになって、誰にでも披露するようになったら、それはちょっと……いやかなり複雑なような気がする。 こっちの葛藤を露とも知らないあかりが屈託ない調子で言う。 「ウィンクできるようになったら練習成果、見てね」 「………………」 にこりと笑いながら見上げてくる。……分かってないんだ、こいつ。それだけでも、十分威力があるのに。その上、何を身につけたいって言うんだ。 それでも結局頷いていた。 「……うん」 「頑張るね!」 「まあでも、ほどほどに、な?」 「どうして?」 「どうしても何ででも」 「?」 きょとん顔をしている相手には、決して理由なんか話したくはない。だって恥ずかしすぎるし。 ふと、気がついたようにあかりがパソコン画面を指さす。 「行きたいね」 「え?」 「遊園地デート」 画面上には、来年春に某大型テーマパークで開催されるイベントの告知が表示されている。何故か撮るハメになった男四人の写真だって、この告知のためだった。何故か、そうだった。 もう一度、あかりが目を細めて「行きたいね」と言う。画面上で、背景に広がる青い空と白い観覧車を見つめながら。 「ああ、うん、そうだな……」 ――行けたらいいよな。遊園地デート。……おまえと一緒に。 頷いたら、隣のボンヤリが笑う気配がした。何だか嬉しそうで、こっちまで釣られて笑いたくなるような、くすぐったくて恥ずかしいような、でも決して悪い気はしないような、そんな気持ちになった。――――本当、そうだよな。行けるといいよな。遊園地。 2012.12.31 *これを書きながらリアル高校生さんはカード作れないので、一番最初の先行予約申し込みできないんだと気づいて、ちょっと泣きそうになった。デイジーがんばれ。みんな、行きたい人みんな、行けるといいですよね。遊園地デート。 [back] [works] |