甘くない


「瑛くん、はい、これ。バレンタインのチョコだよ」
「……手作りだ」
「うん、ちょっとがんばっちゃった。瑛くんのためだけの特製チョコだよ」
「へえ、特製……トッピング凝ってるな。この赤いの、何だ?」
「だから、特製トッピングだよ。ちょっと自信作なんだ」
「……そっか。なあ」
「ん、何?」
「あとでこれ、一緒に食べよう。どっか隠れて」
「……わたしは良いよ! 瑛くんだけ食べて!」
「…………」
「ほ、ほら、だって瑛くん用特製チョコだから……!」
「あのさ」
「うん?」
「何を盛った?」
「も、盛ってないよ! 人聞き悪いよ! あと、瑛くん、笑顔が怖いよ……!」
「ウルサイ。そんなビクビクした顔で“瑛くんだけ食べて〜”なんて、明らかにおかしいだろ! 正直に言え、何を盛った?」
「だから、盛ってないのに……」
「10秒以内に白状しないと、このチョコ、おまえの口に突っ込むからな」
「やめてよ! わたし辛いもの苦手なのに!」
「“辛い”?」
「だから……瑛くん、辛い物が好きだっていうから……甘い物より、辛い物の方がいいのかな〜って、思って……」
「それで、チョコも辛くしたって?」
「うん、そう」
「じゃあ、この赤いトッピングって……」
「一味唐辛子だよ」
「なんつー無茶を……」
「でも、瑛くん、辛い物が好きって……」
「言ったけど、別に甘い物が嫌いだとは言ってないだろ。元々甘い物まで辛くして欲しいなんて思わないよ」
「そうなんだ……」
「辛いチョコってどういうことだよ……初めて聞いたぞ」
「……瑛くん、ごめんね」
「お、反省したか」
「うん……こんなチョコ、うれしくないよね? い、要らない、よね?」
「…………………………いや」
「?」
「うれしいし……要る。……もらっとく。だから、そんな顔すんなよ」
「瑛くん……!」
「…………」
「よかった! いっぱいあるから、たくさん食べてね?」
「いや、たくさんは、その……うれしいけど…………けど、うん、ありがとう」



web clap:2012.01.23~site:2012.02.16
*ラブが辛い。
*「辛い」は「つらい」「からい」どちらでもいい感じです〜(´▽`)(全然良くない)
*(こんなですが)ハッピーバレンタイン!

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