いい夫婦の日の瑛主


(※結婚後、新婚さんなご両人。)



「今日は“いい夫婦”の日なんだって」
「“いい夫婦”?」
「11月22日で、いい夫婦(=1122)」
「ただの語呂かよ……」
「ねえ、せっかくだから、いい夫婦っぽいこと……」
「却・下」
「え〜」
「“え〜”じゃない。必要無いだろ。そんなことわざわざしなくたって俺たち……」
「“俺たち”?」
「………………」
「……瑛くん?」
「………………だろ」
「えっ?」
「〜〜〜〜もう夫婦なんだから、必要ないだろって、言ってるんだ!」
「痛っ! ちょっと、チョップしなくたっていいじゃない! ドメスティック・バイオレンス反対!」
「スキンシップだ!」
「こんな痛いスキンシップ、いりません!」
「大体な! いい夫婦っぽいことって何だよ?」
「えっ」
「ほらな? 具体的なことは思い浮かばないだろ。だから、もうバカなこと言ってないで……」
「……膝枕、とか」
「………………」
「膝枕、プラス、耳かき、とか」
「……………………」
「そういうことしてると、いい夫婦っぽくない?」
「…………………………」
「……ねえ、イヤ?」
「…………………や、いいかも、それ」
「(やったね! バッチリ好印象!)」





「どう? 痛くない?」
「……うん」
「くすぐったくない?」
「いや、別に……」
「わたしは、ちょっとくすぐったい、かな?」
「え?」
「ねえ、初めてだね。こういうことするの」
「……そう、だな」
「もっと早く、こういう時間を過ごせばよかった」
「………………」
「ちょっと、後悔、かな」
「…………なあ」
「ん、何?」
「ごめんな。今まで店のことばっかで、あまり二人の時間、取れなくて……」
「……ううん。お店のことは、わたしの夢でもあったから、いいの」
「これからはさ、もっと一緒に過ごす時間も作ろう」
「瑛くん……」
「こういう、ゆっくりした時間とか…………あと、そうだな。今度の定休日、どこか行かないか?」
「えっ、いいの?」
「もうずっと、どこにも行ってなかっただろ? どこか行きたい場所、ないか?」
「……じゃあ、水族館! 水中トンネル、まだ見たことが無かったから行ってみたかったの」
「ああ、いいな、それ。きっと行こう」
「約束、だね」
「ああ、約束」
「……ふふっ」
「……何だよ」
「わたし、瑛くんのお嫁さんでよかった」
「何だよ、急に……」
「別に。今、ふっと思ったの。ね、反対側、向いて」
「ああ、うん…………俺も……」
「ん?」
「俺も、おまえと結婚できて、よかった」
「瑛くん…………」
「ずっと忙しくて、振り返る余裕とか無かったし、あまり、こういうこと、面と向かって言うことは無かったけど、そう思ってるから」
「うん……分かってるよ」
「これからは、もっと二人の時間、作ろうな」
「三人、だよ。もう」
「えっ?」
「二人じゃないよ、三人、だよ」
「えっ? ……それ、ホントに!?」
「本当だよ。ウソ言う訳…………て、瑛くん、苦しっ……」
「ご、ごめん、うれしくて……その、大事にするから。おまえのこと。これまで以上に」
「じゃあ、チョップはなしね?」
「……チョップは、でも……」
「なし、ね?」
「……はい」
「大事にしてね?」
「ああ。もちろんだ」
「ふふっ。これじゃあ、“いい夫婦”の日じゃないね」
「?」
「“親子”の日、だよ。これからもよろしくね、“お父さん”」




11.11.22
*デイジーが「苦しい」言ってるのは、佐伯くんが急に興奮のままにハグしたからです。描写力ェ……。
*前半に比べ、後半部が非常に極甘(※当社比)になって、書きながら赤面しましたが、とっても幸せな気持ちで書きました。末永く幸せになるんだよ……!

[back]
[works]

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -