お父さんの日


※ねつ造な佐伯家の日常一コマ



「親父、おめでとう」
「? 何だよ急に」
「6月の第三日曜。世間的には“父の日”だよね。おめでとう」
「もしかして、父の日のプレゼント? エライね、よく覚えていたね!」
「ちょ、母さん、頭撫でるのやめてってば……!」
「瑛くんも良かったね!」
「だから子どもの前じゃ、名前呼ぶな……あと、どさくさに紛れて俺の頭も撫でるな」
「どうして?」
「どうしても何も……は、恥かしいだろ。って何回も言ってるだろ!」
「頭を撫でるのも?」
「それもあるけど……母親みたいで何かイヤなんだよ」
「母親だよ?」
「それもあるけど……それだけじゃないだろ。察しろよバカ……」
「瑛くん……」
「……………………万年お花畑夫婦なのも、良いんだけどさあ」
「えっ?」
「息子の目の前でいちゃつくのも大概にしてくれないかなあ」
「え? あ、ああ、悪い!」
「うんまあ、もう慣れたけどね」
「ホント、悪い…………」
「で? 息子の心づくしのプレゼント、どう? 気に入ってくれた?」
「ん? ああ、うん、ありがとうな、プレゼント。つーか、缶コーヒーな」
「ちゃんとラッピングもしてるけど?」
「むき出しにリボン巻いてるだけだけどな?」
「あれ? 気に入らなかった?」
「それじゃあ、確認するけどな」
「うん」
「ここは喫茶店だな」
「うん、隠れた穴場、海辺の喫茶店だね」
「正解。じゃあ、ここの売りも知ってるな?」
「コーヒーがうまいことだよね」
「その通り。で、そのうまいコーヒーが評判の海辺の喫茶店の現マスターといえば……」
「親父だよね」
「そしておまえは俺の息子だな」
「そだね。母さんの息子でもあるけど」
「それはそうだな。で、本題」
「はいはい」
「本格派コーヒーが売りの喫茶店で育った息子が、どうして父の日によりによって缶コーヒーなんか選んでくれたんだ?」
「え、だって親父、コーヒー好きだろ」
「好きだけど、缶コーヒーは無いだろ」
「難しいこと言うなよ。これ、うまいって評判なんだぜ?」
「……ああ、情けない。何でこうなった……」
「で、でも、この缶コーヒー、おいしいってわたしも聞いたことあるよ! コンビニでもよく売れてるみたい!」
「ね、有名だよね」
「……おまえ、トドメを刺してくれる訳な」
「そ、そんなこと!」
「……つーか、思いだした。そうだ、おまえ、高校の時、俺に缶コーヒーくれたよな。しかも詰め合わせの奴」
「ぎくっ」
「……血は争えない」
「そうか、おまえのせいか」
「ひ、ひどいよ二人とも!」
「冗談。ただの偶然だろ。……そんな顔すんなって」
「人が悪いよ、瑛くん……」
「ハハハ子どもの前じゃヤメロって」
「ってゆーか、俺も冗談」
「へ?」
「ホントのプレゼントはこっちだったり」
「……無駄に凝ったことをしてくれるな、おまえ」
「だって、面白そうだったし」
「親をからかおうとすんな」
「だってからかい甲斐があるんだもん」
「おまえは……無駄なことに労力を割くな」
「え? もしかして、プレゼント二つも用意してくれたの?! すごいね!」
「おまえは! 反応が遅い!」
「気に入ってくれるといいけど」
「こっちはまともなんだろうな……おっ」
「あ、あれ……? これって……」
「イルカのツボ押しくん。親父には必要かなって」
「………………」
「………………」
「? どうしたの、二人して微妙な顔して。え? もしかして、印象最悪プレゼントだった? 缶コーヒーより?」
「いや、そういうことじゃなくてだな……」
「やっぱり、血は争えないのかなあ……」
「何のこと?」
「まあ…………悪くはないけど」
「あ、もしかして気に入った?」
「みたい。良かったね、二人とも」
「俺も?」
「キミも。用意したプレゼントを喜んでもらえるのって、とても嬉しいことだよ」
「……そうだね。親父、好みうるさそうだし」
「ね」
「おまえら、全部聞こえてるからな?」



2011.06.21
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*終わるね! 大概こんな調子かと。うんでも思春期真っただ中、デリケートなお年頃の息子の前でバカップルお花畑恋人夫婦っぷりを披露しちゃうのは考え物だな! 屈折しちゃうよ!←

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