13日のバカップル


*5月13日(金)のmemoの小話を追加修正



「佐伯くん佐伯くん」
「何だよ」
「今日は何日?」
「13日だろ」
「ちなみに何曜日?」
「………………金曜」
「ふふーん」
「……何だよ。ニヤニヤすんな」
「13日の金曜と言えば〜」
「…………(嫌な予感しかしない)」
「じゃーん! アメリカが生んだ超有名ホラーシリーズ! ジェ●ソンくんの雄姿を一緒に鑑賞しようじゃありませんか!」
「わー! バカおまえ、パッケージこっちに向けんなバカっ!」
「…………瑛りんの怖がりさん」
「ウルっサイ。何と言おうと俺は見ないからな」
「そっかあ……一緒に見たかったなあ。佐伯くんと」
「…………つーか、DVD見る機械持ってないから見れないだろ。パソコンでも見れるけど、二人だと見づらいだろ」
「うん、だから家で一緒に見ようと思って」
「……おまえん家で?」
「うん。わたしの部屋で」
「……………………」
「うーん、残念だなあ……」
「…………おまえ実は策士だろ。いやでも乗せられないからな!」
「えっ、どういうこと?」
「つーか、別にそのソフトじゃなくたって良いだろ。どーせ見るなら、もっと、こう、別のやつでも」
「別の?」
「そう、別の」
「別のなら、一緒に見てくれるの?」
「まあ、見てやらないでも、ない」
「ホント? やったあ!」
「まあな。おまえがそこまで言うなら、仕方ないってゆーか……仕方なくだからな?」
「じゃあ、サイレント●ル見よう!」
「ホラーから離れろ!」

 ・
 ・
 ・

「……それで、結局どうするの?」
「うっ…………」
「行く? それとも、やめちゃう?」
「………………」
「………………」
「……………………」
「………………行く」
「やったあ!」
「ズルイよおまえ、そうやって色仕掛けしたりして…………」
「(…………色仕掛け?)」

 ・
 ・
 ・

「さあ、では上映会と行きますか! って、佐伯くん佐伯くん。どこ向いてるの。それじゃ画面見えないよ?」
「いーの、俺はこれで。ゼッタイ見ない」
「ゼッタイ見ないって……それじゃ一緒にいる意味ないよ」
「いやそれは、一緒にいる意味はあるっていうか……一緒にいることこそに意味があるっていうか……」
「? あっ、始まったみたい!」
「俺は見ないからな!」
「もう! 男らしくないよ佐伯くん!」
「ウルっサイ。そーいうのは関係ない。ああもう何で俺ここに来たんだホラー苦手なのに……いや、来るって言ったのは俺だけど……」
「佐伯くん佐伯くん、ジェ●ソンくんはオバケじゃないんだよ?」
「えっ、そうなの?」
「うん。だから、そんなに怖くないんじゃないかなあ?」
「でもさ、スプラッタだろ? 気持ち悪いじゃん……」
「一緒に見れば平気だよ」
「おまえさ……何でそこまでして俺と一緒に見たいわけ?」
「ん? ええとね、西本さんがね、好きな人と距離を縮めたいなら、一緒にホラー見るのが一番だって――あっ」
「えっ」
「い、今のなし……! 忘れて!」
「(今コイツ、好きな人って……) な、なあ……」
「あっ、オープニング始まったよ!」
「っ! み、見ないからな……!」

 ・
 ・
 ・

「………………」
「………………ご、ごめんね、佐伯くん」
「…………おまえを信じた俺がバカだった」
「だから、ゴメンなさい」
「なーにが、“オバケじゃない”だよ! がっつりソレ系だったじゃん! あーもう、今日ゼッタイ寝れない。明日学校休んだらおまえのせいだからな!」
「ほ、ほら佐伯くん、暗くならないうちに帰った方が……」
「え? ああ、うん、そうする…………」
「(佐伯くん……)」

 ・
 ・
 ・

「あら佐伯くん、もう帰っちゃうのかしら?」
「お母さん」
「あ、お邪魔しました」
「せっかくなら、一緒にお夕飯食べて行ってくれたら良いのに……」
「いえ、今日は帰ります。遅くまでお邪魔してしまって、すみません」
「そう? たくさん作ったのに……(しゅん)」
「(うっ……)」
「お、お母さん! 引きとめたら悪いよ! 佐伯くん忙しいし、それにあんまり暗くなると、こ……イタッ」
「?」
「何でもありません。では、僕帰ります」
「そ、そう? 気をつけてね?」
「(み、見えない位置でチョップされた……)あっ、佐伯くん! 送ってくよ!」
「一人で帰れるから大丈夫だよ、海野さん。それじゃ」
「(プリンススマイルだ……)」
「はあ、佐伯さんって大人っぽい子ねえ……」
「う、うん……(大丈夫かなあ、佐伯くん?)」

 ・
 ・
 ・

「佐伯くーん!」
「追いかけてこなくていいってば。一人で帰れるから!」
「で、でも……玄関で喋ってるうちに暗くなってきちゃったし、佐伯くん、一人で帰れるかなって……」
「大丈夫だから。つーか、おまえこそ危ないだろ。ここまでで良いから、早く戻れ」
「でも……」
「でもじゃない。……おまえに何かあったら、俺が困るんだよ(ぼそり)」
「えっ?」
「な、何でもない……! いいか早く帰れよ! 物陰に気をつけるように!」
「佐伯くん、あれはフィクションだから、大丈夫だよ……」
「100パーセント言いきれないだろ? じゃあな、俺は走って帰る」
「(佐伯くん……)帰ったら、電話してねー?」
「ああ、分かった!」

 ・
 ・
 ・

pipipipi....

「あっ、佐伯くん?! 大丈夫? 無事に帰れた?」
「……おまえ、声デカイ。電話壊れる」
「ご、ごめん……心配で」
「元凶は全部おまえだけどな。無事帰れたよ。おかげさまで」
「良かった……これで安心だね」
「や、安心じゃない……」
「え?」
「今日さ、珊瑚礁定休日だろ?」
「うん」
「マスター、いないだろ?」
「うん」
「つまり俺一人だろ」
「う、うん」
「…………すごく、怖いだろ。夜、これから、とか」
「佐伯くん…………」
「あのさ」
「ん、なあに?」
「俺、これから寝ようと思うんだけどさ」
「うん」
「俺が寝るまで、おまえ、なんか喋ってて」
「えっ?」
「……いや、おまえのその、ボンヤリした声聞いてたら、安心……じゃなくて! うっかり眠れそうだし……」
「うーん、何だか釈然としないけど、分かったよ! じゃあ、羊を数えてあげる」
「羊って、おまえ……いやでも、よく眠れるかもな、それ……」
「じゃあ、気合い入れて数えるから、佐伯くんも気合い入れて眠ってね!」
「いや、気合い入れたら眠れないから……」
「羊が一匹、羊が二匹、羊が三びーき……」
「ぶっ……」
「ちょ、ちょっと、真面目に数えてるんだから、笑うのはなしだよ!」
「だって、おまえの数え方、笑えてくるんだもん……ごめん、続けて」
「うん。羊が四匹、羊が五匹…………」
「……………………」
「(佐伯くん、元気が出たみたい。良かった……)」





2011.05.16
(終わるね!)
(縦に長すぎてごめんなさい。何よりぐだぐだでゴメンナサイ)
(ここに書いても手遅れですが、デイジーのママンが登場しててすみません)
(パパンはお仕事中でお留守。memoでご両親が出るかも〜とか書いてましたが、結局ご登場願えませんでした……)

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