「佐伯くん佐伯くん」 「何だよ、二回言わなくても聞こえてるから」 「これあげる」 「何だこれ?」 「塩キャラメルだよ」 「は? 塩?」 「流行ってるんだって」 「へえ……」 「おいしいよ。食べてみて?」 「……うん。結構うまいかも」 「でしょ?」 「流行ってるんだっけ? これ」 「うん」 「ふーん。あのさ」 「うん?」 「おまえ、明日ヒマ?」 「うん」 「明日、ウチの定休日なんだけど」 「うんうん」 「試作品作り、付き合って」 「うん、いいよ!」 「言っとくけど、アドバイスを頼んでるんだからな? 食べるだけじゃなく、ちゃんと意見もするように」 「勿論だよ! 楽しみだなあ……」 「よし、じゃあ、今夜は夕飯抜きで気合い入れるように」 「それは幾らなんでも無茶だよ佐伯くん……!」 ・ ・ ・ 「……どう?」 「うーん……」 「イマイチか……」 「おいしいよ? おいしいけど……」 「けど?」 「少し、物足りないかも」 「何が足りないと思う?」 「塩の味があまりしない気がするよ」 「やっぱりか……。生地に塩だと、弱いのかな」 「うーん、生クリームの味で隠れちゃうのかも」 「そうだな。次はクリーム変えてみるか」 「うん!」 「……ああでも、やっぱり難しいな。初めて作るものは」 「そうだね」 「あのさ」 「うん、何?」 「おまえさ、今度の日曜ってヒマ?」 「うん、ヒマだよ」 「じゃあさ……ケーキ屋、一緒に行かないか」 「えっ」 「いやだから、偵察にな! あくまで! その、他の店の塩味のお菓子を見るためにな?」 「そっか、偵察か」 「そう、偵察な?」 「うん、分かったよ。来週、ケーキ屋さんだね」 「ああ、うん。待ち合わせ、遅れるなよ?」 「うん、勿論だよ!」 「あと、腹空かせて来るように」 「うん! 塩味のお菓子あると良いね」 「そうだな」 「ふふっ。デート、楽しみだなあ」 「バっ……て、偵察だって言ってるだろ!」 何はともあれ、来週日曜日、一緒にケーキ屋さんに行けるみたい。楽しみだなあ! スパイスはあなたから [2011.08.27/784文字]多分まだ友好系。塩のお菓子が流行り出したのって、確か2007年辺りだった気がして……(ぼそぼそ) |