揺れるしっぽに首っ丈の彼 | ナノ

彼にまで将来を心配されています。


「おーい、苗字、苗字」
「んー……」

 誰かに起こされてる……?ぼんやりする頭で誰の声かを探る。この声は丸井くんか?丸井くんが何故……?

「起きろって苗字」
「ん、」

 そういえば勉強会してたような……ああ、丸井くんそういえば来てた、来てたね。

「ねむ、い……」

 寝起きの私には部屋が眩しくて両手で顔を覆う。視界が暗くなったことでまた眠気が押し寄せてきた。

「なあ、苗字」

 肩を叩かれる。うーん、丸井くんって顔の割に男前の声してるなあ……。

「苗字!」

 大きめの声で呼ばれて、突然両手首を握られた。そして顔から外される。

「な!起きようぜ!」
「ぅう……もすこし……」

 なかなか目を開けない私の肩を丸井くんががしっと掴む。そして、思い切り私の体を力任せに起こした。

「……わっ!?」

 彼の力は思いの外強くて、その反動で私はぐらりと体が前のめりになる。そのまま正面の丸井くんほうに倒れ、ぼすっと彼の肩に顔が埋もれた。

「…………っ!?」

 丸井くんから微かに驚きの声が漏れた。それと同時に彼の手が私の肩から離れる。

「あ、ご、ごめんね……」

 おもむろに顔を上げて私は謝罪の言葉を口にする。眉間のあたりが痛い、なんてことを思いながら私は打った部分をさする。すると、仁王くんがくつくつと肩を震わせて笑っていることに気づいた。

「仁王くん、私が痛がってることに笑ってるでしょ」
「いや、違うぜよ……くくっ」

 また笑いながら否定する仁王くん。絶対にそうじゃん。もうー。
 とりあえず丸井くんにはもう一度謝っておいた。

「ごめんね、肩痛くない?」
「あ、お……おう!大丈夫!俺こそすまねえ……!」

 丸井くんは少し慌てている。かなり悪気に思っているのかもしれない。私はもう一度本当に大丈夫だからね、と言った。そして私は大きく伸びをする。

「ふぁあ〜とりあえず起こしてくれてありがとう、そろそろ勉強しなきゃね」

 後になって柳くんに怒られたくないしな。ってか少し寝ちゃった時点でアウトな気もしなくない。でも、今から勉強頑張れば多少は許される見込みあるかもしれないじゃん?
 ってことで積極的にわからないところは柳くんに聞いた。

「わけ分かんない」
「分かろうとしているか?」
「してるもん!あーもーなんで文系なのに数学あるの?意味わかんない」
「名前ちゃん数IIだけじゃろ?俺、数Bもあるぜよ?なんなら化学も物理も」
「マサくんは理系じゃん!」

 名前で呼ばれたら、つい最近の癖が出て彼のハンドルネームで呼んでしまった。そのことに気付いた時にはすでに丸井くんが反応していて「え?」って顔をしている。

「お前ら名前で呼び合うほど仲良いの?」
「わ、私はたまに冗談で呼ぶだけだよ?」
「じゃあ仁王はいつも名前なわけ?」
「プリッ」

 揚げ足を取られて私は少し動揺した。しかも、雰囲気が些か変になったから。それなのに仁王くんは俺は知らんぜよみたいな顔で課題の続き始めている。何ではぐらかしたんですか……。普通に名前で呼んでるぜよ?って言うだけでよくない?

 え?どうしたらいいの?なんなのこの空気???って思っていたら、丸井くんがちょっと怖い顔して口を開いた。

「ってかさ、お前無防備すぎな?」
「え?」

 いきなり話題が逸れて私はさらに困惑する。疑問だらけだったのにまた疑問だらけなんだけど……。

「う、うん……?」

 アホ面丸出しで首をひねっている私。一方で丸井くんはやっぱり少々不機嫌な様子で話を続ける。

「部屋に男3人もいんのに寝んのはやめろよ」
「どうして?」
「どうしてって襲われたらとか考えねえの?」
「襲う?丸井くんたちが私を?むしろ私がどうして?って感じなんだけど」
「男と女なんだし、そういうもんだろ!?」
「ほう……?」

 あれか、私だったら二次元の可愛い女の子なら誰だろうと(まあ、ツインテールのロリっ子が理想だけど)をギュッーってしたいとかなでなでしたいとかいう気持ちを抱いてるのと一緒か?相手が女ならとりあえずそういう感情が芽生えるみたいな?
 でも私は女だぞ?それだと男と女なんだし〜という理論に繋がらないんだが……?

「うーん……?」

 それに二次元三次元問わず、私にとったら“男”の相手は“男”だからな、そういうところで丸井くんとの気持ちに差異があるから、丸井くんに共感ができないぞ……。

 ここに可愛い赤也くんが寝てて丸井くんが襲いたくなるっていう妄想なら全力できるけどね?いや、言わないけどさ。

「うわー……全然わかってねえって顔だな、はあ……」

 ため息をつく丸井くん。なんかデジャブ。そういや柳くんも似たような反応してなかったけ?いや、でも柳くんもなんて言ったところで経緯なんて話せないし黙っとこう。

「説明してもらったのに、ごめんね?」

 ひとまず謝っておいた。ってか柳くんと仁王くんなら丸井くんの言いたいこと分かるんでしょ?だったら少しはフォローしてくれたらいいのに。ひたすら自分の勉強に集中してるし。
 もしや私を納得させるのを2人は諦めていると?私が馬鹿すぎて。
 すると、私の心を読んだかのように丸井くんは言う。

「俺、苗字の行く末が心配だわ……」

 おうふ、馬鹿すぎて心配されてますよ?
 丸井くんにまで将来心配されてるだなんて\(^o^)/オワタ
 もしかして私が理解できなかったことは人生において致命的なのか?

 っていうかそんなことより、じゅえる少女の「派遣部隊」が戻って来る頃なのでログインしてお出迎えしたいです。

******
あとがき
 こんなに鈍くする予定なかったのにな\(^o^)/一度そうなったら止まらなかった……。とりあえず、異性にそういう感情が全くなさすぎて逆を想像できない主人公ですって、あとがきでもフォロー入れておきます←
(~20180813)執筆

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