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▼ call

「……すーはー」
 深呼吸をするが、一向に心臓が落ち着く気配はなかった。家の電話を片手に持ち、通話ボタンと睨めっこすること約20分。何故、私がこんな状況にあるかと言うと、柳くんに緊急連絡を回すために電話を手にしたが、緊張のあまり電話できないということである。緊急なのだから、さっさと回さなければならないことは分かっている。しかし、なかなか通話ボタンを押せない。
「今度こそ……!」
 心では決心するも指は動かず、ポチッと音が鳴ることはなかった。
「……っ、できな、い……あぁー……んー…どう、しよ…」
 遂には唸りだし、姉には何こいつ的な目線を送られる。あとで覚えておけよ…!いやいや、それよりも電話だ電話。ってか何で連絡網が男女混合なわけ?まあ、憧れの柳くんに電話できるというのは嬉しい。と言ったものも、できていない状態なので何にも意味はないのだが。
「ねえ」
「……!?」
 いきなり声をかけられビクッとする。横を見ると姉が手を差し出していた。
「電話かしなさいよ」
「えっ、あ、ごめんね!お姉ちゃん必要だったのか」
 そんなとこね〜とニヤニヤしながら受け取った姉はピッピッと番号を入力して通話ボタンを押す。そして私の手の上に極上の微笑みとともに電話を残して走り去った。
「え?」
 耳を当ててみるとプルルルルと聞こえた。やばい!切らないと!そう思ったときには既に手遅れで、電話の向こうから、もしもし柳です。という声が聞こえてきた。いつも心地良いと感じるあの声も今は逆効果である。
「うぇっ、や、柳くん!?」
「俺の家の者は全員、柳だがな」
「モシモシ苗字デス」
「ああ、知っている。」
 もう、私の心臓は爆発寸前。電話なので当たり前だが、耳に直接、声が入ってくる感じがまた私をドキドキさせるのだ。
「緊急、連絡網…なんだけど…」
「えらく、遅かったな」
 緊張し過ぎてすぐに電話できませんでした。なんて言えるわけもないので、気にしないでと言って適当に取り繕っておく。それから連絡について話した。
「…以上です」
「ああ、わかった。それにしても連絡が回ってこないのだと心配したぞ」
 柳くんでも心配なんてするんだ。
「ごめんね……ってか何で連絡くること分かってんの!?」
「フッ…俺を誰だと思っている」
「ああ、参謀でしたね」
「そうだ」
 声色からして、自信に満ち溢れた笑みを浮かべる柳くんが想像できた。
「じゃあ、そろそろ…」
「ああ。次はプライベートで電話がしたいな」
「それって――」
 最後まで言い切る前に声が遮られた。
「では、また明日」
「えっ?…うん、またね」
 そう言った同時に電話は切れた。果たして、最後の言葉の意味は何だったのだろうか?明日聞いてみようかと思ったが、私から話しかける勇気もないので、暫く悩むことになる。


(俺がお前からの電話をどんなに心待ちしていたか。あまり焦らさないでほしいものだな…)

*****
あとがき
初っ端からこのお題とか難しかったです…!でも、めげずに頑張りました。ってか次のお題の方が難しいです…。「2 会社に電話する」です。うん、ファイトだ私。
前サイトにて記載

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