腕の中には一人の少女。

その身体をぎゅう、と抱きしめる。
急なことで彼女も少し戸惑っているだろう。
それでも構わず抱きしめる。

…温かい。
肌は柔らかくて、ふわふわとした髪は頬をくすぐって、彼女独特の香りで脳が犯される。


「どうしたの?」


腕の中から聞こえてくる声が控えめに体に響く。
それもとても心地好い。


「んー…しばらくこうされててくれないか?」


言うと彼女は身体の力を抜いて身を委ねて来た。
少しだけ腕に力を込め、より互いの身体を密着させる。
時間が過ぎるにつれお互いの体温も上がっていく。


「バッツ…ちょっと、苦しい」

「あ、ごめん」


腕を緩め、身体を火照らせた彼女の顔を見る。
白い肌に頬はうっすらと朱に染まっていて、それがまた色っぽく見えて。
柔らかそうな唇に吸い込まれるように自らのを重ねる。

一瞬だけ触れて、また重ねて。
今度は長く、深く、彼女の舌先を弄ぶ。

呼吸が辛くなったのか、戸惑いを隠せないのか、彼女の頭は逃げようとするがそれを押さえつける。
唇を離したら、腕を解いたら、彼女が何処かへ行ってしまうような気がして。


「…ごめん、もう少し」


微かな隙間からそう呟く。
それもすぐに塞いでしまう。


きっとこの行動も、この感情も、全部一方的なもんなんだろう。
自分以上に鈍感だろう彼女には、きっと気付かれぬままなんだろう。
分かっているのに、尚も唇を押し付ける。


───…ああ、

そんなことすら言葉で伝えられないおれは、なんて情けないんだ。





 * * *

甘いのを目指してこれですか…。

本当は電波曹達さんのお題「充電時間一日中」を基盤に書いてたんだけど思いっきり踏み外してるような。
まあ、ある意味充電してるようなもんか。


「猶予」は 猶予う(タユタウ) の送り仮名をなんとなくデジョンしたもの。







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