偶然、彼女を見かけたことがあった。そのときは赤い鎧を来た少年と一緒に歩いていて、そいつが一生懸命彼女に何か話していているのを、隣で楽しそうに聞いていた。彼女は、なんとも不思議な存在だ。まるで、作り物のようで、人形に感情があって動いているかのようだった。
 おれは、無意識に彼女を目で追っていた。きっと、人ごみの中でも彼女は映えるんだろう。彼女はすぐにおれに気づいた。彼女はゆっくりと視線を向けて、ただおれを見た。何故か隣の少年に言おうともしなかった。目に見えるところに敵が居るというのに、無防備じゃないだろうか。近寄って話しかけるわけでもない。敵同士だからと戦いを挑むこともしなかった。急に立ち止まった彼女を、少年は不思議そうに見上げた。少年の口が動く。どうしたの、とでも言ったのだろうか。おれは読唇術が出来るわけではないから分からないけど。彼女は少年へと視線を落として、首をふる。おれの突発的な読唇術は、あながち間違っていなかったのかもしれないと思った。彼女は少年に笑顔を投げ掛けて、何事もなかったかのように、二人ともまた歩き出した。遠目ではあったが、綺麗な笑みだと思った。







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