『君のこと好きって言えたらいいのに。』

寒空の下、私は息を吐きながらそう呟いた。白い息を吐くたびに心の中には靄がかかっていくようで、私の悩みなんかおかまいもなく私の心をつかんでしまった彼は何故か人一倍輝く笑顔をそこら辺の男女どもに振りまいて今日の放課後が始まろうとしていた。なんて日なんだ。遠目からあの笑顔を見るのはとても拷問すぎるくらい辛くて私の心を酷く苦しくさせた。今すぐにでも駆け寄って、二文字を彼の前で並べるのにそんな勇気は生憎持ち合わせてはいない。私って可哀想なんてまあよくも思いついた言葉だ。けれど、今の私には酷く似合いすぎる言葉なのかもしれない。あーめん。切ったこともない十字を切って天を仰いだ。

『好きだ!好き!好き?すき・・・す、き』

ここに来てから一体どのくらいの時間を費やしただろう。もういい加減帰りたいのに、未だに私は彼を遠くから眺めている。
手に持っていた双眼鏡を強く握りしめ、レンズをのぞき込むと、あの笑顔が太陽のような笑顔が間近に見えてさっきよりも速く打つ鼓動を何も持っていない手で強く抑えた。ああ眩しい。一瞬倒れそうになった私の足は強く地につきバランスを上手く取っていた。双眼鏡は刺激が強いことに気づいたけれど、もう一度覗き込む。双眼鏡持ってきてよかった。丁度良く今日は野外ライブだから音漏れも会場からは程遠くてもそれなりには聞こえるし、何よりも彼はとても目立つ。さすがはアイドルだ。ふと気が付いたときには曲も終わりライブも終わっていた。レンズから目を離すと先ほどまで存在していた彼が忽然と消えていた。恐らく、ライブも終わったから帰ったのだろう。夢のような時間はすぐ終わってしまう。踵を返すと無いはずの壁にぶち当たる。思わずその壁を見上げるとそこには今にでも噛みつきそうな目線が私を睨んでいた。

「テメ〜!!!さっきからこそこそと目障りだ!さっさと俺様の前から消えろ!」

神様、私は死ぬのかもしれません。憧れの、あの人が今目の前に私の目の前にいてしかも話しかけてくれてます。これは神様の悪戯なのでしょうか。さっきは適当に十字を切ってごめんなさい。今なら懺悔ができそうです。

「オイッ!聞いてんのか??あ??」

彼の言葉を聞きながら脳の録音機に刻み込む。何も反応しない私に腹が立ったのか、彼も文句を言ってから校舎へ帰ろうとしていた。その反応に気づき咄嗟に腕を掴んでは思い切って私は言ってしまった。

『大神晃牙くん!ファンです!!結婚してください!』


好きという暴言を


(ふざけんじゃねえ!二度と俺様の前にあらわれるな!)
(ああっ結婚って…!先走りすぎた!まずは一緒に住んでください!)
(人の話を聞け!つか付いてくんな!)
(せっかく巡り会えたのにもうお別れですか?!)
(何言ってんだ!ここんとこ毎日通ってるのは知ってんだよ!)
(えっ何で知ってるんですか?!もしかして私のこと好)
(ふざけんな!噛み殺すぞ!)

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ずっと夢主ちゃんのターン。
とりあえず、大神晃牙くんのストーカーしてる主人公したかった。

2016/01/23
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