新名くんの場合


教室で、カメラのシャッターを切る瑠桜ちゃんを見かけた。

「あーれ?なにしてんのー?」
「きゃっ、…新名くん?もう、驚かさないで」
「別に驚かしたつもりはねーんだけど…写真?ナニナニ?思い出づくり?」

って、言っても、瑠桜ちゃんまだ二年生だけど。

「うん…新しくカメラを買って、いろんなものを残しておきたいって思って」
「へ〜、で?いい写真は撮れたの?」
「ふふっ、まあまあかな?」

やっぱこの人カワイイ。

「どれ?見せて見せてー」

ニコニコと寄っていくと、いいよ。って瑠桜ちゃんが画面を見せてくれる。

「へえ…っつーか、景色ばっかなんだ?」
「ううん。人物も撮ってるよ。そこからは抜いてるけど」
「へ?なんで?」
「…秘密」

にこっと人差し指を口元に当てて微笑む。

「その顔は…反則」
「え?」

きょとん、と首を傾げてる。ああ、今の顔、可愛すぎて、写真撮っておきたかった。

「な、瑠桜ちゃん」
「ん?」
「オレも、撮りたい」
「え?なにを?」
「アンタ」

目を瞬いた後、ちょっと驚いた顔をする。

「いいっしょ?携帯あるし!」
「…ダメ」
「え?なんで?」
「わたしが撮りたいんだもん。だから、新名くん撮ってあげるね?」

にこ、と俺からカメラを取り返すと、すかさず構える。

「ちょーっと、ダメ。オレの写真撮るなら、瑠桜ちゃんのもちょーだい、って」
「どうして?」
「ど、どうしてって、そりゃ…」

オレがアンタの写真を欲しいから。って、少し前だったら、軽く言えたはずなのに、どうして今は言えねーのかな‥。はぁ、情けねぇ。

カシャと、シャッターの音で我に返った。

「え?ちょ、今撮った?!」
「ふふ、だって、新名くん声かけてるのに反応ないんだもん」
「つーか!それ消して!!」
「え?よく撮れてるよ?」

ほら。と瑠桜ちゃんが見せてくれた写真は……何やら、少し頬を赤くしたオレ。

「ちょ、こんなのよく撮れてねーって、消してよ」
「こんなの…って、新名くんヒドイ」
「ちが、そーじゃなくてっ、こう、なんつーか…」

慌てて否定すると瑠桜ちゃんが吹きだす。

「なっ…、か、からかったの?!つーか、アンタの方がヒデェ!」
「ふふっ、ごめんごめん。でも、撮りたかったの」
「へ?」

瑠桜ちゃんがオレをじっと見つめてる。

「でも、そっか…、新名くんが嫌なら消そうかな」

カメラを操作して画像を呼びだす瑠桜ちゃんを思わず止める。

「ま、待って」
「ん?」
「それ…マジで誰にも見せねぇ?」
「うん。約束するよ。でも、どうしても嫌なら消すけど…」

しゅん、とちょっとだけ寂しそうな目で見られる。
そんな顔されたらイヤなんて言える訳がない。

「分かった。消さなくていーよ」
「本当?ありがとう!」

ほわ、と優しく笑う。

「あーーっ、やっぱ、オレ、アンタ撮りたい!」
「え?ちょ、新名くん?!」

瑠桜ちゃんのビックリした顔。一枚くらいはやっぱり欲しいって思う。

「ん〜、しょうがないなぁ」
「いいの?」
「うん。でも今日はダメ」
「どして?」

拗ねた表情を見せたら、瑠桜ちゃんがふふっと笑って、頭をふわりと撫でてくれた。

「女の子には準備が必要なのだよ」
「…って、それ…」
「だから、また今度ね?じゃあ、今日はもう行くから」

瑠桜ちゃんが教室から出ていく。
その姿を見送って、瑠桜ちゃんの言葉の意味を考える。

オレ…ちょっとだけ期待しても、いいんかな?なんて、少し頬が熱くなるのを感じた。




※言い訳タイム→撮影場所、教室。新名くんは、教室で話すことが意外に多いので、教室にしてみました。
ではでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。



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