コウくんの場合
「おーねーがーいー!」
「ゼッテェ嫌だ」
「だって、」
「だってじゃねぇ、俺は協力しねぇからな」
ジロリ、と睨んだ所で効きゃしねぇ。
コイツは、またとんでもねぇこと言いだしやがって。大概のヤツなら睨むだけで済むけど、コイツだとそうもいかねぇか。
「いいでしょ?」
「嫌なんだよ。諦めろ」
しつこい。やらねぇってさっきから言ってんのに諦めようとしねぇ。
ハァ、とため息を吐いた。
「もうっ、絶対いいと思うのに」
「よくねぇ。よく考えろテメェ」
だいたい俺が教会の花に水やってるってそんな絵ヅラがいいわきゃねぇ。
カメラを買ったとか言われても、そんな姿を撮られてたまるか。
「ほら、コウくんの優しさが詰まってる一枚にしたいじゃない?」
「はあ?バカじゃねえのか?」
「お願い、一枚だけでいいから!」
上目遣いで俺をじっと見つめる。
だけど、どう頼まれようと、んな恥晒しな写真を撮らせてたまるか、琉夏の笑い転げる姿が目に浮かぶ。
「そんな顔してもダメだ」
拗ねようと、なにしようと、絶対に、撮らせねぇ。
「じゃあ、わたしだけしか見ないから?それでもダメ?」
「はあ?」
瑠桜しか見ねぇって意味もよく分かんねぇが、どういう事だ?
「わたしとコウくんの思い出のアルバムに一枚!って感じで、どお?」
「どおってなんだ、どお?って。んな顔してもダメだ」
「もうっ」
「だいたいオマエしか見ねぇなら、撮らなくてもいいだろが」
「嫌。だって、わたしが欲しいんだもん」
コイツ、今なんて言った?
「……」
「わたしとコウくんだけの秘密にするし」
「俺と、オマエだけの?」
とかなんとか言って、本当はルカに見せて笑う転げる気じゃ…って、コイツはそんなことしねぇか。つーか…。
「どっらにしろ嫌だ。諦めんだな」
「わーんっ、待って待って」
俺の袖口を掴んで離そうとしない瑠桜。
「…ハァ、分かった」
「え?ホント?!」
「ただし」
「……えっ?」
驚いた表情をしたけれど、コクリと頷いた。
「さっきの言葉、嘘じゃねえだろうな?」
「もちろんっ!女に二言はない!」
胸を張って言われても、まあ、ルカに知られなきゃいいけどよ。
「じゃあ、撮るね〜」
一枚だけと約束させて、ジョウロを持つ。
つーか、早くしろ、コラ。
「もうっ、もっとにこやかに!」
「うるっせえ、元々こんな顔だ」
「もうっ、コウくん!」
それでも何とか写真を撮った瑠桜が満足そうに笑う。
「ほら、これ、いい出来でしょ?」
そう言って見せた画像。
「まあ、悪かねぇ」
「ふふっ、でしょ?やっぱり素敵だな〜」
「オイ」
「えっ?」
パシャ、と振り向いた瞬間、瑠桜の顔を撮る。
「ちょ、こ、コウくん?!今絶対ヘンな顔…」
「クッ、ああ、間抜け面で写ってっぞ」
「ええっ、ヒドイよ。消して!」
「約束したじゃねえか」
同じ構図の写真を撮るとはひと言も言ってねぇし。
「だって、そんなヘンな顔…」
「ばら撒かれたくなかったら、テメェもその写真誰にも見せんなよ?」
ニヤリと笑うと、瑠桜が膨れた。本当は、ヘンな顔なんかしてねぇけど、教えてやんねぇ。
いつか…見せてやらなくもねぇけどな。
※言い訳タイム→撮影場所、教会。ジョウロスチルが出た時、結構ビックリしたのです。お花とコウちゃん…うん、似合わない(コラ)
ではでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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