ルカくんの場合


カシャ、とシャッターを切る音が響く。

夕暮れの校舎。屋上からの景色。その後ろ姿に見惚れていたのは、内緒。
瑠桜は俺に全然気づかない。さすがに少し寒くなってきたから、その後ろ姿に声をかけた。

「あれ?何やってんの?」
「あ、ルカくん。うん、ちょっと写真をね」
「写真?」

そんなの知ってる。
最近のオマエ、いつもカメラを嬉しそうに見つめてたから。

とぼけた俺に気づかず、カメラを持ち上げる瑠桜。

「そうだ。一枚撮ってもいい?」
「俺を?」
「そう。ダメ?」

ダメだなんて、言うはずないけど。ニコリと笑いかける。

「いくらで売る気?」

なんて、冗談で言ったのに、きょとんとしてる。

「え?」
「あれ?違うの?」
「ち、違うよっ、あのね。わたし、カメラを買ったの」

一眼レフのデジカメを嬉しそうに見つめる。

「自分で?突然どした?」
「ずっと、欲しかったの。それで、色々な写真を撮っておこうと思って」

屋上の景色に視線を移す。オレンジに照らされた横顔がすごく綺麗で、引き寄せたくなるのを我慢する。

「学校の写真を?」
「だって、もう二度と戻ってこない青春だよ?」

ふふっ、と冗談ぽく笑う瑠桜に、微笑む。

「青春、ね」
「だって、事実だもん。だから、たくさん撮っておきたいなって思って。ね、ルカくんも協力して?」

ここ最近、写真を撮ってる瑠桜の事、知ってた。俺はいつもオマエを見てるから。

「うーん、まあ、オマエになら撮られてもいいかな」
「ホント?じゃあ、そっちに立って」

指定した場所に立つと、瑠桜の顔が綺麗に見えた。

「あれ?逆光じゃない?」
「いいのいいの」

カシャ、とシャッター音が響く。

「…うん」

写真をチェックした瑠桜が満足そうに頷くから、カメラを覗き込んだ。

「…って、これ」

夕日のオレンジの中に、俺のシルエットが映ってる。なんか、プロの写真みたいだ。

「シルエットだけだけど、綺麗でしょ?」
「…そうだな」
「こういう風に、その瞬間を切り取れる写真って、素敵だなって思わない?」
「どうだろうな?けど…オマエが撮る写真は…うん、いいな」

本当に写真を撮るのが好きなんだなって、そんな気持ちが滲み出てる。

「…いい写真が撮れるかな?って思ったの」

ふ、と笑った瑠桜が綺麗で。よっぽどオマエの方が綺麗だと言いたくなる。

「…それ、どうするの?売る?」
「もうっ、売ったりしないよ!だけど、また今度撮らせて?この屋上で」
「屋上、で?」

その指定に首を傾げた。

「うん。なんとなく、ルカくんは屋上が似合う気がする。今度はもっとちゃんと撮るから」
「その写真でも十分だけど。オマエの頼みならなんなりと」

本当は、どんな写真でもオマエが撮って、そしてオマエが持っていてくれるのなら文句はない。ワザとふざけて頭を下げた。

「もうっ、…でも、いい写真を撮るから」
「期待してる」

さっきの写真も、よかった。オマエの瞳に俺がそう映っているんだとしたら、素直に嬉しい。

まだまだ、オマエの気持ちは読めないけど。

それでも、今ここに一緒にいられることが幸せだって、思うんだ。




※言い訳タイム→撮影場所、屋上。きっとわたしの中で例のスチルが印象深いのだと思います。
ではでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。



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