花月 零さん*箱庭の中の光/1
箱庭の中の光
体を包み込む、眩い真っ白な光。
声を上げる間もなく、体中に駆け巡る衝撃に、思わず目を閉じた。
「…で、此処は何処だ?」
紅の髪をした少年−−−アッシュは、途方に暮れたようにそう呟いた。
朝からヴァンに呼び出され、部屋に向かおうとしていた…筈であった。
だが、道すがら突如現れた光に包まれ、目を開けたら見知らぬ森の中に倒れて居たのだ。
目の前を包み込む木々に、手入れされた花々。
鳥の囀る声が、何処か遠くに感じる。
(花が手入れされてるから…何処かの貴族の邸か?)
へたり込んだ状態のまま、呆然と綺麗な白い花に触れる。
すると、懐かしい邸の風景が頭の中から蘇り、急いで頭を振った。
それから、ゆっくりと立ち上がる。
(誰かに見つかる前に、さっさと此処を出よう
此処にいたらイライラする)
それに、厄介事は御免だしな…とそう思い、移動しようした瞬間だった。
ガサリ
そう草が揺れる物音が聞こえ、バッと振り向く。
「あれ?だれかいるのか?」
不思議そうな、自分より少し高い同じ声が聞こえ、目を見開く。
朱金の髪が、ゆらゆらと揺れる。
アッシュより少し薄い、だが一緒の若葉色の瞳と目が合い、固まった。
アッシュと唯一違うのは、白と黒の対照的な服だけで…
(レプリカ…っ!?)
よりにもよって、自分の邸まで戻ってくるとは、とアッシュは固まった。
目の前の朱金はそんな固まったアッシュに、首を傾げる。
「なんだおまえ、あたらしい、しよーにんか?」
拙い言葉で此方に話しかけてくるレプリカに、アッシュはどうしようもない憎悪が込み上げる。
だが、グッとそれを抑えた。
(落ち着けっ…此処で正体をばらして何になる!!)
拳を握り締めながら、レプリカの方を向く。
「い、いえ、姉が此処のメイドをしていまして、今日は実家に届いた手紙を届けに来たのです。
今、姉が忙しいと言うので、此処で暇を潰してるんですよ……ルーク様」
呼びにくい自らの名前だった名を呼ぶ。
すると、朱金のレプリカはふーん、と呟き、アッシュに近寄った。
「なぁ、おまえひまなら、おれとあそぼうぜ」
「はい?」
ひくり、と口をひきつらせながら、そう答える。
まったく言って、冗談じゃない。
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