faster,妹になりました


※臨也が女体化しています。
苦手な方はご注意ください





「やられた…」


新宿某所。
今日も自称、素敵で無敵な情報屋・折原臨也の一日が始まる。








「はっ、ざまあみろ」


その情報屋が事務所兼自宅としている高層マンションの一室。
そこでは彼の実の兄である春哉の乾いた嘲笑が一つ、零れていた。

ざまあみろ、
コーヒーの入ったカップを片手に、珍しく朝早くから目覚めていた春哉が目の前にいる臨也を見て勝ち誇ったようにいう。してやったり。まさにこの言葉の通りで、そんな春哉と対峙するように立ち尽くしている臨也は恨めしそうな目でむくれていた。



「なんてことしてくれんの、今日取引入ってるのに!」

「行ってらっしゃい」

「この姿で行けって?馬鹿じゃないの!?」



この姿、そう言いながら自身の黒いシャツを摘み上げる臨也へと視線を向ける。窓から差し込むわずかな日の光がシャツの首元から見える肌を照らした。いつもよりもだらしなく肌を露出させているそのシャツ。いつもよりも狭い肩幅。なで肩の体にはいつもの黒のシャツは些か大きすぎた。


つまり臨也は、体が女になっている。


つい先日、春哉がされたように。次は臨也が春哉の手によって用意された薬で弟であるはずが妹になっているのだ。
春哉が今日、早く起きていたのも、してやったりとした表情を浮かべているのも目の前の光景のために他ならない。


確かに臨也が女の体になったのは成功だ。体は一回りも二回りも小柄になっているし、若干声も高い。
だが春哉は思う。



「なんかあんま変わって無くないか?」

「変わってるから、完璧に女の子だから!」



いや、でも俺の時は容姿も女だったけど、
内心思う。目の前の臨也は確かに体は女になっているようだけれども、容姿はほとんど臨也だ。少し輪郭が丸みを帯びて全体的に柔らかい印象を受ける顔つきにはなっているが、限りなく男の臨也。

新羅から直接貰ってきたのだからまぎれもなく同じ薬だし、もっと女の子な雰囲気の臨也を期待していたから正直期待外れだ。

取引どうしよう、と一人取り乱す臨也を前に春哉ははあ、と一つ大きなため息を零してから口を開いた。



「ばれないんじゃねえ?」

「は?」

「いや、だから意外とばれないと思うけど」



確かに身長は小さくなっているけれど、まあいけないことはないだろう。取引はおそらく封書を渡すだけだ。ならば行けるんじゃないか、そう提案する春哉に臨也は信じられないと言うように絶句した。



「ばれるだろ!普通に考えて!」

「そうか?」

「そうだよ!どうすんの、女の子の俺が取引先のおっさんたちに欲情されたらっ」

「欲情ねえ…」



声を荒げる臨也に春哉は首をひねる。
欲情、欲情。つまりヤりたいとか思うこと。本当の意味でロストバージンの危機じゃん、臨也は大真面目にそう言っているのだろうし、春哉自身、そういう行為は反吐が出るほどに嫌っていた。だが、なぜか現実味がない。ありえないとは言えないのだろうけれども、なぜか、どうしても。

いや、原因は分かっていた。
一人で取り乱す臨也に歩み寄って、そのシャツの裾に手をかけた。



「え、ちょっと春哉何…?」



無言でそばに寄られそして変らず無言でシャツの裾をつかまれた臨也が意味が分からないと停止する。だが春哉は何も答えずにただじっ、と一点を見つめていた。
欲情されたら、と臨也は言うが正直、男が女に欲情するのに重要なある場所が物足りないのだ。

ばっ、
有無を言わさぬ速度でつかんだ裾を捲りあげた。



「…絶壁だ」



捲りあげた先にあったシャツの中の世界。
素肌にシャツを羽織っただけだったために、その中はすぐに見ることができた。シャツをつかんだまま、春哉はやっぱり、と内心で確信した。

慎ましい、かわいらしい胸だ、というレベルじゃない。
まさに絶壁。



「お前これじゃ興奮するもんもしな、」

「へ、」

「へ?」

「変態ーーーーー!!!」

「はあ?何言っ、ぶっ!」



ばちん、
部屋中に響き渡るような絶叫とともに振り下ろされた臨也の右手が春哉の顔面を直撃した。



「春哉のえっち!セクハラ!DV男!」

「なんだよ急に!」

「っもうお嫁に行けないーっ」

「……」



顔面を両手で覆い、泣いて見せる臨也に春哉は再びため息を吐く。
変態、って付き合いだして早数年。何をいまさら。確かに性別が逆転していようと恋人の体を見ただけで顔面に手のひらをぶち込まれるとは。
しかもビンタでもない。真正面から顔面にばちん、と振り下ろされた手のひらに春哉は鼻を押さえていた。



「…そいや取引何時からだよ」

「9時だけどそれが何…ってうわ、もうすぐ9時!?ど、どうしよう…!」

「はあ…書類渡すだけだろ?俺が代わりに行ってくる」

「それは駄目」

「…なんでだよ」

「駄目ったら駄目」

「なんで」

「そうだ!運び屋に頼もう!」



書類を渡すだけでも臨也は頑なに拒んだ。
それがなぜなのか、春哉は実際は心当たりがある。昔からそうだ。自分から危険な裏社会に首を突っ込んでいったのに身内がそれによって巻き込まれることを嫌う。
いや、嫌うようになった。ある一件から。初めから積極的に巻き込もうという姿勢は無かったが、それでもたまには春哉も手伝いはしていた。足がなければできない事だったり、臨也が運び屋と呼ぶセルティ・ストゥルルソンを始めとしたそれを生業とする輩の手が空いていなかった時などに。
ある一件。
それから臨也は春哉にはほとんどそれをさせなくなった。

まあ、過敏になるのもわかるけどセルティばかり使いすぎだ、
目の前で声なき相手に電話を掛ける臨也を見ながら春哉は呆れたように笑った。


盗み聞きといえば聞こえは悪いが、目の前で会話をされているのだから仕方がない。聞こえてきた会話によると取引場所は池袋らしい。おいおい、だったらセルティはわざわざ新宿まで来て池袋にまた戻るのか。

それはあんまりだ、と春哉は臨也の手から携帯端末を取り上げた。



「あ!ちょっと春哉っ」

「セルティ?俺が書類預かって池袋まで来るから、そっからお願いできるか?」

「何勝手に言ってんの!」

「いつもごめんな。着いたら電話するから、また」



通話終了のボタンを押して、臨也に端末を返した。
不満そうな顔をした臨也が春哉を見つめるも、春哉は気づかない振りをして笑った。



「さーて着替えてくるから準備しとけよ」

「…足つけられても知らないよ」

「だーいじょうぶだって。帰りにケーキ買うかな」
「俺チョコレート系ね」

「はいはい」



妹になりました。




小ノ葉様のリクでした^^*
小ノ葉お久しぶりです、夏にはお世話になりました…!
リクエストしていただけてとても幸せですっ
妹になりましたのナルシスト気味な臨也を兄ちゃんが白い眼で見る、みたいな内容…にそえていれば幸いです;
どのあたりがナルシかといわれるとたぶん、欲情云々のところかと…。
臨也(女)は貧乳だと思う。甘楽ちゃんは巨乳がおいしいけれども!
臨也が女体化しても髪型とかそのままで兄ちゃんの時ほど変化がないんじゃないかなーと思います。もとから臨也は眉目秀麗(笑)ですし!
ではでは、リクエストありがとうございました。どうかこれからもよろしくお願いいたします。








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