ふぅ、と壁にもたれる。疲れた。
もう今日は自分の仕事が終わったのであとは帰るだけ。しかしまだ用事を済ませて居ない相方を待って、俺は壁に寄りかかっていた。
空が青いな、なんて思いながら今日の夕飯は何を作ろうかと考えていた時。
「ねーねー、そこのおにーさん!」
「す、すみません、ちょっと出雲くん!」
まだ高い、子供の声が聞こえた。
多分俺にかけられたのだが、双子だろうか、そっくりな顔が並んでどちらがどちらの台詞を言ったのかいまいち分からなかった。
片方が少しだけ後ろに隠れるようにして立っている。だからたぶん後ろにいる方が後者の台詞を言ったのだろう。と俺は結論付けた。
「えっと…、俺、だよな? 何か用?」
子供相手に無愛想なのは(ていうか誰に対してもだが)もう性分なので見逃してもらいたいところである。
「おにーさん、姉ちゃんのクラス知ってるか?」
「あっ、出雲くん!」
んー、よく分からないが迷子ではないらしい。それにしても似ている。…どっかで見たことがあるような……、あ、分かった。
「お前ら名倉の双子だろ?」
「えっ、おにーさんてえすぱー? なんで知ってんの?」
「出雲くん自分からばらしてるよそれ」
「名倉財閥は有名だからな。聞いたぜ、名倉の双子が家出した、って」
うちの所有地の範囲にある学校は専門的な分野の大学から幼稚園まであるからすべての人間を把握するのは大変だが、金持ちの家くらいなら知っている。ましてや俺の本家と繋がりが深い家柄の人間なら尚更だ。確か今日確認した全生徒の中にひとり、名倉がいた。それの分家か、兄弟か、そんなもんだろう。
聞けばどうやら姉を迎えに来たらしい。よし、ここで会ったのも何かの縁だろう。
「よっしゃちびども、付いてこい。おにーさんが案内してやろう」