「うっ…もう、無理…」



7月31日。私の誕生日だからと、友人達が様々な贈り物をくれたけれど。まだまだ夏真っ盛りなこの時期、毎年の如く夏バテしている私にケーキは重い。

確かに甘いものは大好き、だけどまさかワンホールくれるなんて思わなかった。てっきり皆で食べるんだと思っていたら、私達これから用事があるから!あとは彼氏と二人でラブラブやっちゃって、きゃー!という、よく分からないノリで去っていった友人達。



「彼氏って…アイツが来る訳ないじゃん」



はぁ、と一人溜め息を吐く。いくら今日が私の誕生日だからって、彼が現れるとは思えない。記念日とかに頓着しない性格だし、気まぐれだし、そもそも私の誕生日を把握しているかどうかすら怪しい。

彼が来ないとなれば、一人暮らしな私は必然的に一人でこのケーキを消費しなきゃいけない訳で。折角友達がくれたもの捨てるなんて事は絶対にしたくないし。



「銀さんにお裾分けすれば良かったかな…」



友人達が去った後、偶然町中で遭遇した知り合いを思い出す。糖尿病予備軍の彼ならきっと、余裕で完食できるだろう。

ていうかさっきから独り言ばかりだな、私。虚しい。それもこれも神威の所為だ、彼女の誕生日くらい覚えてろバーカ。…なんて悪態をついてはみるものの、寂しさだけはどうにも拭えない。



「…神威のばか」

「俺が何だって?」

「っ、え…?」



随分と聞き慣れた声がしたと思えば、いつの間にか背後に、神威が立っていた。…いつ入ってきたんだろう、全然気づかなかった。



「なんで此処に…」

「なんでって、誕生日なんでしょ?」

「…知ってたの?」

「まぁね」



驚いた。私の誕生日なんて気にも留めてないだろうと思ってたのに。…それなりに大切にされてるって、思い上がってもいいんだろうか。



「というか、仕事は?」

「全部阿伏兎に押し付けてきた。トクベツな日だから、って」



…ごめんなさい、阿伏兎さん。でも嬉しい。神威が、私の誕生日を特別だと思ってくれている事が。



「はい、これ」

「…?なに?」

「開けて」



渡された包みを開ければ、可愛らしい髪飾りが入っていた。神威の瞳のように蒼い、蝶のモチーフのシンプルなもの。神威はそれを私の手から奪い、ぱちん、と私の髪に留めた。



「うん、似合ってる」

「…ありがと」



顔が、熱い。こんな雰囲気は未だに慣れない。神威は平然としているけれど…ああ、調子が狂う。



「誕生日、おめでとう」



神威がにっこりと、綺麗に笑って。それから唐突に降ってきた唇に、私はぎゅっと目を瞑った。




2011.08.06
実は20日くらいから書き始めてたんですが、テストという壁に阻まれ結局過ぎてしまったという…。
何はともあれ、せいさんお誕生日おめでとうでした!一方的な贈り物ですが、よかったら貰ってやってください><;

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