団長は部下をなんだと思っているのだろう。パシリや召使、もしくは玩具か何かと勘違いしてるんじゃないだろうか。
「逃げ回るだけじゃなくてちゃんと本気出してよ」
「本気も何もこれが限界、です…!」
何が悲しくて団長の相手をしなければならないのか。何の相手かは御察しの通り、手合わせの、である。団長曰く、暇潰し。
「団長相手に私が敵う訳ないじゃないですかぁぁあ!」
「煩いな、ごちゃごちゃ言ってる暇があったら死ぬ気で戦えヨ」
「私まだ死にたくありません…!」
心の中だから正直に言おう、うちの団長は酷い。戦闘時の非情さもだが、部下の扱いも酷い。まあ部下、といっても主に被害者は阿伏兎さんか私なのだが。
まず団長の身の回りの世話から始まり、団長がサボった仕事の肩代わりや団長がやらかした問題の後処理、エトセトラ。なかでも一番骨が折れるのが手合わせだ。
「逃げ回るのでも精一杯なのに攻撃しかけるなんて、無理です!」
「それじゃあ俺がつまらないじゃないか」
「知りませんよそんなこと!」
暇潰しの方法なんか、もっと他にたくさんあるだろうに。戦いなんて物騒なものじゃなくたっていいじゃないか。これじゃ暇潰しじゃなくて部下潰しだ。
付き合わされる度、どれだけ私の寿命が縮んでることか。今まで死ななかったのが不思議なくらいだ。
「あ、」
「…!」
ドス、と団長の右腕が私の左頬の真横を通って壁に刺さる。…あっ、危な…!
「お腹すいたから、もういいや。昼飯作って」
「は、はい…」
戦闘の直後にご飯作り。普通の量ならまだいい、けど団長の大きな胃袋に合わせたご飯となればかなりの量になる。それも結構な労働だったりする。
なんて人遣いの荒い団長なんだ、と心の中で文句を言いつつ、お腹に溜まりそうなものを作っていく。
…よし、このくらいあればなんとか、足りるだろう。とんでもない量ゆえに重みも凄まじく、よろけながら団長のもとへ運んだ。
「出来ました、よ!」
「いただきます」
言い終わるのとほぼ同時に、料理を口に運び始める団長。…あんなに時間をかけて作った料理が、凄いスピードで団長の胃袋に消えていく。本当に味わって食べてるんだろうか…。
「なに、溜め息なんか吐いて」
「…いえ、別に」
団長に料理の感想を求めた事はない。艦内には料理専門の非戦闘員もいるのに毎回私に作れと言ってくるあたり、それなりに気に入ってくれているのだろうが…直接、団長の口から聞いたことはない。
「ごちそうさま」
「お粗末様でした」
「…ああ、そうだ。これ、あげる」
ぽい、と渡されたそれは、女物の可愛い指輪。透明な袋に入れられただけの簡易なラッピングがまた団長らしいというか。
「いつもありがと」
美味しかったよ。ぽん、と頭を撫でられて、顔に熱が集中するのを感じる。…団長は、ずるい。普段あんなに人をこき使う癖に、たまにこんなことするから、ドキドキして離れられなくなっちゃうんだから。
2011.06.12
せいさんへ、相互記念に献上させていただきます…!
飴と鞭をうまく使い分ける神威さん、というリクエストを頂きまして妄想が爆発した結果がこれでございます…あれ、飴がちょっとしかない。…これも私の特徴でs(殴)
せいさん、相互ありがとうございました!ご期待に添えていたら幸いです><;