電線に数十羽の青いオウムの群れがとまっている。私は缶コーヒーを片手にベランダからそれらを見ていた。空は昼間だが暗くどんよりとしていて、高台にあるこの家から見下ろす街並みも、見上げる空も、黒い。だからこそ、この青いオウムの群れは際立ってその青を映し出していた。まるでモノクロの映画に青だけが輝いているようでとても美しい。オウムたちは、別段、声を上げたり、羽ばたく様子もなく、ただただ一列に同じ方向を向いてとまっていた。どこかのペットが逃げ出したのだろうか。それにしては数が多いオウムたちはどこを見ているのだろうと、ベランダから少し身を乗り出す。思えばそれが良くなかった。重心を前に置きすぎた私は、地面に落下し、意識はあるものの手足は動かず、頭からは血が流れている感触がある。痛みの方は語るのも野暮なので割愛する。運の悪いことにこの付近は、人通りが少なく、助けも呼べない。意識が遠のく中、オウムたちの群れが『いただきます』と一斉に叫んだ。ああそう言えば隣には、病気で余命わずかな娘さんがいたっけな。オウムの群れは、私を啄んだり、缶コーヒーの残りを啜ったり、忙しない。私はあっという間に骨だけになり、後に事故か事件かの区別もつかぬままこの事は迷宮入りとなった。引き取り手がなかった私の白骨を、ある画家が引き取った。私の骨をごりごりと削り青い絵の具と混ぜた。キャンバスには青いオウムが描かれ、完成するとその絵のオウムはばさりと空高く舞い上がる。画竜点睛という言葉を私はどこかで習った気がする。オウムになったのか、絵の具になったのか分からなくなった私はそんなことを考えていた。あと、できれば缶コーヒーが飲みたいが、それは我儘だろうか。
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