彼岸花がとても好きだ。
今頃の季節になるとある一定のところに群生していて毎年同じところに咲くものだから、毎年、その場所に出かけては眺めるのがその短い間の日課になっていた。家に持ち帰って一輪挿しに飾りたかったが「火事になるから駄目よ。」と、母に釘を刺されていた。迷信だとしてもなんだか気になるので、言葉通りに従って眺めるだけにした。その年はなかなか、咲いてくれなくてずいぶんとやきもきしたものだが、自分も受験生ということで、あまり時間がなく見にこれなくなっていた。その頃からはすっかり存在を忘れていた。数年経った頃、彼岸花のあった原っぱは大きなマンションが建っていてずいぶんがっかりしたのであるほどなくしてそのマンションは大火災にあって一面は焼け野が原になってしまってひどく残念だったのを記憶している。現場も野次馬根性で見に行ったが、それはまるで彼岸花が大量に咲いているかのような真っ赤な炎に包まれていた。その焼け野が原、今は雑草ばかりで、また彼岸花が咲いてはくれないものかと。毎年また通うことにしている。そう言えば、放火の犯人は「毎年、ハルジオンを咲くのを楽しみにしていたのに!」と証言しているらしい。今の部分に原っぱには一面にハルジオンが咲いている。犯人はそれを見ることはない。自分はあの彼岸花がもう一度見たい。大量に咲いた彼岸花を。
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