顔をマジックで九分割された顔には、上段左から1、2、3。中段左から4、5、6。同様に下段も左から7、8、9、と書かれていた。残念ながら目の前に横たわる死体には、2の部分に銃痕が残されていた。。犯人が何の目的で九分割しているのかは、皆目検討がつかないが、唯一言える事は愉快犯であるということだ。しかも死体からは銃痕の穴から身体中の体液やら内蔵やらが抜き取られている。私はその死体を初めて検視した時、ある貝を思い出した。アサリを捕食する巻貝で殻に穴をあけて中の身を吸うのだ。何ともグロテスクな話であり、アサリ業はこの害貝に頭を悩ませている。さて、人間を対象とした、このような生物は私は少なくとも知らないし、おそらくいないだろう、銃器を使用している時点で人間の犯行に間違いないのだ。身体中の体液などが抜き取られている点に関しては理由の予測もつかないが、実現させるとすれば相当な吸引機材が必要だろう。その機材の出処から洗い出せば案外早く容疑者の目星がつくのでは無いだろうか。本日の業務を終えて、帰宅すると。妻がご機嫌な表情で出むかえてくれた。こういう時は、美容院に行ったか、エステに行ったかで私の反応を楽しみにしている証拠である。私にはいつもの妻と見分けがつかないのだが、「何だか雰囲気が変わったな?」とお茶を濁しておいた。妻は「評価、3」と答えた。
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