は、と目が覚めたとき、直前まで見ていた夢を忘れてしまった。何か見ていたことに間違いないのだか、どうしても思い出せなかった。耳にさしっぱなしのイヤホンからはアルバムの曲が一周してもう何も聞こえてはいない。若干耳に鈍痛を感じながら引き抜く、ぼと。と何かが落ちた音がした。最初はイヤホンのスポンジ部分が取れたのかと、思ったが、大きさが違う、形も。極彩色の青とピンクのマーブル模様で弾力性と滑らかさを持った個体だ。指で突つくと、フルフルとふるえている。面白いので、しばらく遊んでいたら、ぱちん、と弾けて頭の中に写真を何百枚も連続で見せられた様な奇妙な感覚を味わった。そして、その映像が先程までの夢であることに気がつき、シーツに付いた夢を洗うために洗濯機に乱暴に放り込んだ。手洗いしてやる様な、いい夢では無かったからだ。とっておきの漂白剤をたんまりといれてスイッチを押す、ぐわらん、と洗濯機が周りだしたので、テレビを見ながら朝食を採った。テレビでは降水確率20%を伝えている。そういえば、何の夢を見せられていたんだったか。答えはもう白く消され始めている。
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