数学に於ける解無しという答えは個人的に非常に手応えがない。必死に計算しようとして無理矢理絞り出した答えが間違いで、正解がこれの場合、何だかがっかりしてしまう。問題の時点で気がつかねばならないのだが、なかなかどうして、試験などのときに限って出さなくていい意地をみせてしまうものだ。先程返された答案を見る。解無しと書かなければいけない部分にどうやったらこんな計算をしようと思い付いたのか自分でも理解不能な数字記号の羅列に大きくばつが書かれていた。どんなに考えたとしたって答えが正解でなければ意味がない。ご丁寧にか親切にか、渦中の問題の横には、「どうした?落ちついて問題をみろよ」と癖のある数学担当教員の字で書かれている。くしくもその問のみ不正解だった。何度見たって結果は変わらない、次は頑張るとしよう。答案用紙をボロボロの通学鞄に放り込む。ボロボロなだけではなく、意味を理解したくもない文字のペイントが頼んでもいないのにしてあるという、なんともハイセンスな鞄だ。ちなみに一部の教科書、机、上履きにもご丁寧に施されている。この問題に私の出した答えはまだ無い。落ち着いて最善の答えを導かねばいけない。ただし教員はとっくの昔からこの問題を解いている。解無し。それが答えである。まったく手応えがありゃしないったら。
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