空いてるかしら。と椅子を引いたがここにはもうあなたは座れないのよ。二人がけのカウンターの席で先に座っていた女が言った。一人分席は空いているのに、誰か後からくるのかと尋ねたがどうだか分からないわと答えた。ともかくとして私たちが同じ席に座ることはパウリの原理に反するのよ。と女は言う。私たちは電子でもないし、この女と完全に同等なんて思わない。何を言ってるの。座らせなさい。と強気に出ると女が席を立った。仕方ないので御譲りするわ。そういって別のテーブル席にへ消えていった。私は不愉快極まり無かったがそこに座った。マスターにあの人はよく来るの?と聞いてみた。よく来るのならば曜日や時間をずらしたい。この席は私にはこだわりがあるのだ。「来ますよ、あなたが座った30秒後、もう後15秒ほどで来ますよ。」カランと店のドアが空いた先程の女が立っていた。回りを見渡すと先程の女も別のテーブルに一人でいるではないか。別人だろう。双子か何かかもしれない、いぶかしんでいると、女が隣に来た。空いてるかしら。と聞かれたが、気味が悪いのでここにはあなたはもう座れないのよ。と答えた。マスターは混んできたから作業を早めないと店を拡大しないといけませんね。と言って慌ただしくグラスを洗い始めた。後から来た女が引かないので御譲りするわと私は席を立った
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