患者たちの頭は大きな白い球体の帽子のような被り物で覆われているので、私たちの間では、患者のことを電球と呼んでいた。無論、公にして呼ぶわけにはいかないので、それは専ら職場の愚痴を酒の肴にするときの通称名である。ある日電球たちに画用紙を一枚渡して自由に絵を描かせた。ただひたすらに耳だけを描く者、顔に縦ならびの目を描く者。はたまたミケランジェロの再来かのような芸術的な絵を描く者。様々であった。電球たちの複雑な脳波はコンピューターで確認しているが簡単な喜怒哀楽程度であれば色つきのランプが点灯し分かるようになっている。それがまた電球そのままであったので私はつい愉快になってしまう。おやおやもう九時だ。さあ、みなさん!消灯の時間だぞ!ははは!
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