長い長い階段を登っていく、古い石段は所々欠けていて下手なところに足を着けば崩れて下まで落ちてしまいそうだ。赤い立派な門をくぐると大勢の人達が奇妙な動きでひらけた場所で踊っている。太極拳、などに近いだろうか。ゆっくりと手足を動かし、くねくねと踊っている。よく見ると手には風車を持った人、風鈴を持った人、金魚の入ったビニールの巾着を持った人の三組に分かれている。後ろから階段を登ってきた中年の男性が「ああ、君は初めてここに来たんだね。ここでは風車、風鈴、金魚の入った巾着の中で好きなものが選べるよ。少し前まではリンゴ飴があったんだけど、残念だったね。」そう話す男性の手には風車が握られていた。その時キラキラと空から金平糖の雹が降ってきたので皆、口を開けて空を仰いだ。パクパクと見上げたまま頬張る様は金魚のそれのようであまりに滑稽であった。口にした金平糖はひどく薄荷の味がした。御盆までには上手く踊れるようになろう。今年こそは人見知りの妹は祭りには来るだろうか。もしいるなら、大好きなリンゴ飴を渡したかったんだけどな。
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