ふうっ、と息をはくと最後の蝋燭の火が消えた。もうすでに消すまえから明かりはその蝋燭しか無かったので、いきなり真っ暗になったという気はしない。最近、暑くなってきたから百夜怪談でもしようなんてことになって、ノリのいい友人達とそのまた友人達みたいな集団で順番に怪談をしていた。百夜怪談というのは百話怪談をしてはいけない。99話で止めなければいけないのだ。だから先程の蝋燭は99本目だった。

99本。

誰か、数えていただろうか。もう30話目位から何話話したか曖昧だったような気がする。ぱっ、と、誰かが部屋の電気を点けた。久々の光に目がなれなくてしぱしぱする。あたりを見回す。友人達とそのまた友人達。何か人ならざるものがこの中に紛れ込んだって気が付けないだろう。吹き消された蝋燭の畑を見てとても一本、一本数える気は起きなかった。

じゃあこの話はおしまい。

このあと電気を消すなら気をつけて。
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