私はかあさんのお腹の中では三つ子であった。だが生まれてすぐに他の二人は死んでしまった、一人は栄養状態が悪く未熟児で、もう一人は臍の緒が首に巻き付いて息をしていなかった。とうさんからその話を聞いたとき、私は、亡くなった二人の分も立派に生きていこうと決意した。人一倍勉強も運動も頑張った。学力は全国でも上位の方をいつもマークし、運動では部活こそ入ってはいなかったが下手な体育会系の学生よりも優れていた。とうさんとかあさんは「鳶から鷹が産まれた」と誇らしげであった。私もとても嬉しかった。だが私にもどうにも苦手なことがある。料理だ。手先が不器用なのだろうか?材料を落としてしっちゃかめっちゃかにしてしまうのである。今日も朝食に玉子焼きを作ろうとしたら玉子を全部床に落としてしまった。

「ご飯くらいは私がつくるわよ。」

「大学のことだが金の心配なんてしなくていいぞ、お前の好きなところに行けよ。」

ありがとう。義母さん、義父さん。そしてごめんなさい、あなたたち鳶から産まれたのは。鷹じゃなくて。
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