ピアノの音に合わせて子供は歌い、踊っている。私はそれを教室の隅から眺めていた。本来ならば私だってあの輪の中に入らなければならないのだが、御遊戯というものに今一つ興味を抱けない、寧ろ嫌悪しているふしがあったので、こうして小さな卓袱台の上で白い折り鶴を何羽も作っては無造作に放り投げていた。並べたくなかったのだ。私の作品は誰の干渉もなく、空を舞い、何処かしらの地に着けばよい。白の折り紙は貴重なものであった。いたずら書きをすることにうってつけの素材だったからである。御遊戯をしている一人がこちらを怪訝そうに睨みつける。あの子は絵を描くことが好きであったな。こうして私に独占されることは腹立たしいか。だが、私はこれを本来の役割を担わせているのであるから非難される理由などない。本来の役割を果たせなかった私が作り上げた折り鶴は後日まとめて屑籠に押し込まれた。母にそれを伝えると、しばらくして彼女も同じくして折り鶴を作り上げた。それは御遊戯の出来る折り鶴であった。
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