俺は非常に腹が立っている。あくせくと働いて、それに見合った給料を受け取ることで仕事というものは成り立つはずである。ところがどうしたことか俺の手元には月賦も一万円札が一枚握られているだけだ。週4回の職務、勤務時間は大分短いものの社会的に立場の高い会社の社員であることは間違いない。仕事は主に外回りで場所を点々とするもの。この際には付き人が俺を送迎してくれる。少しばかりいい気分である。もう一つは店頭に立ち、我が社のビジネススタイルをアピールするものだ。昨日はなかなか羽振りのいい客が五百円ほど支払っていった。これも俺が絶え間無い人の良さを前面に出し、アピールをした賜物である。しかしながら、会社の役員共は天引きかなにかは定かでないが、俺が集めたそれを強奪し、俺の懐には先ほどの一万円札、ああ、忘れていた。電車賃にもならないほどの十円玉やら五円玉がなけなし程度、持ち合わせているのみだ。明日はまた違う地域を回るらしい。不思議なことに俺に賃金を支払うのは家族連れで子供が多い。それに釣られてほ他の通行人も合わせるように俺の懐を潤わせる。同伴する会社の人間がなにかを宣伝文句しているのだが、俺の知っている言語ではないので分かり兼ねる。オインニオーガーシーアス。なんのことやら。
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