【始まりは乱数から】


ヒトは落ちた。
地球の排泄物として。
深海に深く深く。深海に深くと表現するのは些か諄い表現だろうか。だが、現状を表すのには適していると考えられるので此方を使用する。
ラプラス深海。
ヒトはそう名付けた。現在地点に於いて何一つとして不確実な物はなく、確実に未来を予測できる。という仮想的な存在「ラプラスの魔」を引用し、ヒトがその存在になりうる事を唯一の希望として。
地球から落とされたとはいうものの此処は地球ではない特殊な空間である。浮力は無く、重力の干渉はそのままに海底を自由に歩行する事は可能であるし、呼吸も肺で行う事が出来る。触覚には多少、水中ならではの抵抗が微弱に捉えられるが支障はなく、また、嗅覚、聴覚に関しても何ら地球と変わりはない。何が違うかと言えばヒト以外の生物が地球上では見たことも聞いたことも想像したこともないものたちで満ちあふれている。という点だろうか。カンブリア大爆発を彷彿とさせる光景は科学者たちには魅力的であるが、一般人にとっては脅威に他ならない。なんにせよ中々救いようがあることでそれらにヒトへの捕食行動、攻撃性が皆無なのである。
ヒトは原始生活を余儀無くされるかと思いきや、既に生息している生物たちが築き上げた文明の恩恵を与り、衣食住に不便はない。
言語こそ生物たちに伝わりはしないが、極めて不干渉且つ、不便ない関係を結んでいる。
ヒトはこのラプラス深海で大まかな4組織を作り上げた。
劔会、蒼円印、石十字、三ツ葉同盟である。各組織の目的と役割は追って説明したい。
兎にも角にも、ヒトは「母」の叱りを受け、此処に落とされたのである。

【ラプラス深海/著者不明/XXXX年】



←back

- ナノ -