僕はある時、ヒーローだった。変身はできなくても、近所に住む女の子をいじめっこの男の子から守っていた。そのいじめっことはよく取っ組み合いの喧嘩をしたものだ。いつだっていじめっこは先に泣き出し、オバサン先生に言いつけた。ある日、オバサン先生は僕を呼び出して「あなたは正義のヒーロー気取りの偽者ね」と叱った。そうか僕は偽者だったのか。偽者なんて格好悪い、ヒーローはその日を境に辞めた。あの女の子は中学生になってもいじめられていた。でも僕はヒーローではないので助けに行くことはもうなかった。ただただひたすら無関心を貫いた。だけど担任のオジイチャン先生は「無関心な人達もいじめている人と同じです。」と言った。なんてことだ。さすがに悪役なんていうのはごめんだ。なので僕は女の子の相談にのってあげることにした。すると何でか僕とその子は恋人なんじゃないかと周りがからかい始めた。恋人ではないと言えば言うほど、囃し立てられてしまって、どうしたものかなって考えていた。だって僕はヒーローにはなれないし、悪役にはなりたくない。ましてや引き立て役の不細工な脇役と恋人なんて一番嫌なんだもの!
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