柔らかそうな球体を両手を高くあげて子供たちが歌う。何を意味しているのかは分からないが、私には何かを祭り上げる催しのように思えた。買ったばかりの一眼レフにその姿を写す。現代の写真というものはどうにも加工ばかりが進み、面白みに欠けると私は思う。現実世界ありのままを撮ることが写真というものなのではないだろうか。10枚ほど撮ると子供たちが興味深げに覗いて来たので画面に写したものを見せた。しかし、どうにも反応は薄い。こんなものかとさして気には留めていなかったが、一人の子供が画面を指差し「ノロロ、ロロロロ11、11、11」となぞる。他の子供たちも同意するかのように神妙な面もちで頷く。その行動が厭に気味が悪く、言語も謎だ。私はあくまでもにこやかに「何か不思議なものでも写っていたかな?」と訊ねてみた。すると先ほどの子供が「クロロL1」とだけ呟き私の顔を覗き込む。いよいよ不気味になり始め、私は苦笑しながらその場を後にした。家に帰り、あまり気が進まなかったが現像作業にかかる事にする。現像した写真はそのままの景色があり、子供たちが楽しそうに歌っているただそれだけのものであった。なんだか拍子抜けしてしまい、とりあえずはアルバムの中にしまう。彼らは何を言いたかったのだろうか。あれは単なる子供たちだけの流行りの言葉か何かなのかもしれないな、私の頃にもそういったものがあった。思いに耽りながら、オレンジジュースでも飲もうかと冷蔵庫を開ける。いつも困るのはアップルジュースと区別がつかないといったところだろうか。
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