例えば52枚のカード全てがジョーカーだったとして、ゲームは成り立つだろうか。ポーカーであればもちろん皆、スペードのロイヤルストレートフラッシュを望むので、勝敗がつかないだろう。スピードではどうか。ここでスピードを知らないかもしれない人々に説明が必要になる。スピードというのは、赤、黒、のマーク、詳しくいえばハートとダイヤ、スペードとクローバーの2種類のカードを数字の小さいほうから大きい方へ色違いに順番に並べ、あらかじめ52枚のカードの半分ずつを手元から無くしたほうが勝つというゲームだ。これには手元のカードを素早く手前に一枚ずつ置くという、器用さが求められるから、ある程度勝負はつくだろう。非常に不毛な条件下であっても、様々なゲームの幅を持つトランプであればもっと他のゲームであればより楽しめるかもしれない。残念ながら、私はあまりトランプのゲームの知識は深く持ち合わせていないので、スピード以外は思いつかなかった。52枚のカードが全てジョーカーだったら。何故か私にはこの条件が非常に魅力的に感じるのだ。何故だかは分からないが、あの道化師が手元を全て埋め尽くしているということを考えるだけで、心躍るのだ。このことを恋人に話すと、それならば全てジャックのカードの方が楽しめると答えた。ポーカーで4カードのフラッシュが揃えられたら、それこそありえない奇跡のようで素敵だから。だそうだ。そう言われてみれば希少価値があるからこそ、ジョーカーに惹かれるのであって、実際、手にとったら微塵も楽しくないゲームが始まってしまう。恋人が言った全てがジャックのカードの方が、まだ色々な可能性を秘めていて面白そうだと興味がわいた。所詮、道化師など、飽きられてしまえばそこでおしまいなのである。
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