雑記 | ナノ



学校からの帰り道。商店街途中の小さな裏道から質の悪い怒鳴り声が聞こえてきたかと思えば、数秒後それは悲鳴に近いそれに変わる。


あーあ、またか。


呆れたように、だが仕方ないと思いながらこっそり裏道を覗き込もうとした瞬間、情けない声を上げながらこちらに数名の男子が走ってくる。咄嗟に身を交わし黙って見守ったが、どうやら正しい反応だったらしい。


「ちくしょう、覚えてやがれ!!」


ある意味定番の捨て台詞を吐きながら走りさってゆく男子達の身体は、怪我こそ擦り傷程度であるものの、顔は明らかに涙目だ。一方的にやられたのだろう、気の毒に。同情はしないけど。体格は大きいし見たことのない顔ばかり、年上かな。念のためなまえの記憶と照らし合わせてみたが、該当する人物はなく、とはいえこの状況、きっとただの通りすがりのなまえと完全に無関係とはならないのだろう。
すっかり彼らの後ろ姿が見えなくなってから今度こそしっかり裏道を覗き込むと、そこには太陽の印を背に背負った少年と、彼に向かって嬉しそうに頭を下げている少年がいる。後者の少年は身体が砂まみれになって鞄を大事そうに抱えており、さっき逃げていった男子達のことも察するにカツアゲにでもあったのだろう。全くぶっそうな世の中だが、救いはあったらしい。前者の少年が助けに入り結果返り討ちにでもしたのは目に見えた。
なまえはここでの出来事に頭を悩ませながらも、未だ頭を下げられている少年に近付いてゆく。何故、彼女は見てもいない状況を察し無関係でないとまで確信したのか。それは、彼がなまえの幼なじみだったからだ。


「牙王ちゃん何やってんの」
「げ、なまえ!?」
「――って、言わなくてもわかるけど。どうせまた太陽番長やってたんでしょ…」


苦虫を噛んだような声を出した幼なじみ――未門牙王を睨みつければ、彼は先程誇らしげにしていた表情から一転、急に焦りだししどろもどろに言い訳を連ねていく。とはいえ、この場の状況で言い訳がきくと思っているのか。なまえが追い撃ちをかけるように「せ・な・か」と半眼と言ってしまえば、彼は慌てて太陽の印が描かれたジャケットを脱ぎ始める。
遅すぎる。呆れたようになまえがいうとぐうの音もでないらしい。1人の少年を救ったヒーローは既にそこにはいなかった。


「ママさんに存分に仕置きしてもらうのね」
「は!?いや、待て!!告げ口はやめろ!!やめてくれ、なまえー!!」
「い・や」


叫んで懇願されるがなまえは素知らぬ顔をして「2倍…いや1週間もしない内にまた喧嘩したんだから3倍かも」などと呟いてそれを聞いた牙王は悲鳴を上げている。
一方、自分を助けてくれた少年の1人の少女がきた瞬間の打って変わった様子に、唖然としていた少年はふと件の少女の視線を合わせてしまう。ビクリと肩を震わせるが、少女は気にせず少年に近付くと、心配そうに首を傾げるのだった。


「大丈夫?帰れそう?」
「あ…は、はい!」
「そう、なら良かった。次からは気をつけてね」


そう、軽く服の砂を払い落としにっこり笑うと少女はくるりと反転して裏道を抜けてゆく。焦った顔をしながら少年はそれを追い掛けてゆき、見えた背後には既に太陽の印はない。


「頼む、なまえ!貸しでいいから黙ってて下さい!!」
「牙王ちゃん、自業自得って言葉知ってる?」
「嫌だー!3倍は流石に死ぬ!!」
「ご愁傷様」


そう会話の内容は少し物騒ながらどこか微笑ましい様子でさってゆく2人には、家族ともただの友人とも違う絆があるのが、赤の他人から見てもよくわかってとれる。


「太陽番長…」


そう呟いた少年は、自分を助けにきてくれか彼を称する名前と共に、その太陽番長を言い負かした少女のことも強烈な印象のあまりわすれられないんだろうと、なんとなく思うのだった。





(なまえー!)
(仕方ないなあ、今度発売するマッスルさま特選試合ベスト10DVDで手を打ちましょう)
(また格闘家かよ…)
(おっと手が勝手にママさんのアドレスを…)
(よろこんで!!)






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