それは薔薇の花片が白しか知らなかった頃、泣きたくなるほどの幸いの中。
微笑めば、世界は開かれていくものと思っていた。
けれども、世界はこれらの感情一つひとつをあの白雪のように透徹らせては溶かしていくばかりで、
とうとうどんなふうに笑い、花を慈しみ、世界が愛してくれていたのかを思い出せないようにしてしまった。
時折、やさしい貴方の事を愛のように夢に見る。
それは、白雪にうずもれた指先とてのひらがすべてを満たしてくれるのだと信じていた頃の、幸福な話。
あの庭先の花が踏み荒らされる事も知らずにいた、愛されているのだと思っていた。
良い子にしていればいつかきっとここへ来てくれるのだと言い聞かされていたし、ただ、待っていた。
もう貴方は微笑まない、そのクオリアの意味を見いだせない。開いても開いても、世界は閉ざされていく。

「……ねぇ、オレ、アヴィスから出てこなければ良かった?」

ほんとうにやさしいのは、だれですか。




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