神子様は政子様に何か言われたようです。 「お嬢さん…良いことを、教えてさしあげますわ。」 やけに耳につく高い声が、頭の中で響く。不快で、仕方がない。 大好きな人たちが死んでいくのを見た。助けたい、と思った。だから私はあの世界へ戻った。 何度も時空を越えた。何度も何度も、それこそ回数など覚えていられないくらいに。 沢山の怨霊を、人を、斬った。そのことに対する罪の意識は、一体いつ無くなったんだっけ。 振り回す刀も封印の力も、何かを奪うものに変わりはない筈なのに、それに対してあまりに軽いように思えた。 後悔はどこにもない。これでよかったのだ、と。素直にそう思える。 思える、のに。 「運命という絶対的な力を歪めることができる。人の死ですら、なかったことにできる。それは、」 彼女の言葉が蘇るたびに、身が凍る思いがした。考えたくはなかった。 「それは、はたして、人と呼んでいい生き物なのかしらね?」 何も知らなかった頃の自分には戻れない。 もう私は、運命の空虚さも死んでいく愛する人の冷たさもそこに流れる血の生暖かさも知っているのだ。 人としての理からなど、もうとっくにはずれていた。 110508 →戻る |