龍馬×アーネスト
LaLaDX5月号4コマネタで、現代の遊園地です。













手首を掴んでいた龍馬の手を強引に振り切り、いい加減にしてください、と後ろで喚いた声はがらがらと掠れていて、その方へ目をやれば、肩をしきりに上下させて疲れきった様子のアーネストが居た。

「なんだ、ちいとばかし頼りないぜ、アーネスト?」

「貴方が私をあちらこちらに引っ張りまわすのがいけない!しかも貴方が選ぶ乗り物は、尽く私の心拍を上げます!」

「お前さんがそんなに声を荒げるのも、日本語がぎこちなくなるのも珍しいな…」

「今はそんなことを言う場合違います…!」

完全に頭に血が上りきっているのか、変わらず少々片言な日本語で喚くアーネストを眺めながら、龍馬は軽く溜息を吐いた。
ゆき達に連れられて来たこの"遊園地"とやらには、見たことも無い上に移動手段でさえないという乗り物が沢山あって、それが龍馬の好奇心を大いに刺激したのは言うまでもない。しかしアーネストを連れて、ゆき達が言っていたところの"絶叫系"な乗り物にばかり乗っていたのには理由があった。遊園地へ向かうバスの中でタウンマップをわくわくとした心持ちで眺めていた龍馬は、それを後ろから見ていた都に面白いことを教えられたのだ。

『…と、あとこれな。この辺りの乗り物…ってか絶叫系の、怖いやつ。こういうのに二人で乗るとさ、恐怖のドキドキを恋での緊張と勘違いする、なんて言うんだ。知らなかったろ?』

まあ私達の世界では超有名な話なんだけどさ、なんて笑う顔は悪戯っ子のそれそのものだったのだが、既に都のその前の発言について思考を巡らせていた龍馬が気付くことはなく。

あとは、想像に難くない。遊園地に着いた途端、龍馬は大はしゃぎでアーネストを連れまわし、都の言っていた乗り物を片っ端から回って、冒頭に至るという訳だ。

(こんな筈じゃあ、なかったんだがなあ…)

疲れ果てた風情のアーネストを前に、龍馬は頭を抱えた。少し我を忘れすぎたかもしれない、と後悔の気持ちが頭をよぎる。
本当は、ある程度二人の心拍が上がったところを狙いアーネストの耳元で甘言でも囁けば、いつもはそっけない彼もしおらしい姿を見せてくれるかもしれないな、なんて思っただけだったのに。
これじゃあ逆効果だ、と。龍馬はもう一度溜息をつく。

「溜息つきたい、むしろ、わたし、です。」

疲れたからなのか、それとも声を荒げたからなのか。未だ肩で息をするアーネストが、なんだかやけに滑稽だった。
慣れない謀(という程のことでもないが)をして、裏目に出る自分も滑稽だ、と、龍馬の腹にくつくつと笑いがこみ上げてくる。
今は笑うところではないと思いつつ、ついに耐え切れなくなった龍馬は、ぶは、と盛大に噴出すのだった。

「龍馬さん…貴方は何なんですか!」

「わ、悪い悪い。でもなあ…俺達ゃ何やってんだ、と…我に返っちまって…ははっ!」

「…わからない、人だ。」

アーネストは確かにそう言ったけれども、その呆れた表情は貼り付けたように薄っぺらで、眉根を下げるその顔をよく見れば口をもごもごとさせ今にもつられて笑ってしまいそうな様子が見て取れた。

そうしてひとしきり笑った龍馬は、先ほど振り切られた手をもう一度アーネストへとやった。ただ一つ違うのは、今度は手首ではなく掌同士を合わせたこと。

「俺が悪かった。今度はゆっくり周ろう。今日は折角のでえと、だもんな!」

「でっ…、とにかく、まあ、反省して頂ければ結構です、が。」

俯きがちにそう言ったアーネストの顔は僅かばかり赤く染まっていた。それが絡められた指のせいか、意味が分かって使っているのかも怪しい"デート"という言葉の響きのせいかは知れないが。






「なあなあ、あれなんか見事な馬じゃねえか。相乗り気分といくのはどうだ?」

「な、なんだかすごく恥ずかしい目に合う気がするのは私だけでしょうか…?」




(110428)


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