「お茶は、いかがですか?」
「ありがとう、リブ。」

アシュヴィンを訪ねて常世の国へ来た私を、迎え入れてくれたのはリブだった。

「もうすぐ帰ってくると思いますから、少し待っていて下さい。」

ええ、そうさせてもらうわね、と返した私に、彼はぼそりと呟いた。

「・・・や、もっとも、私はしばらくこのままでも嬉しいですがね。」

その言葉に、戸惑うこと数秒。

「・・っ!な、り、リブったら・・!」

思わず顔が赤くなっても、それくらい仕方ない筈だ。そんなことを、言われたら。

「もう申し上げてあるでしょう?私はあなたに愛情の全てを、捧ぐと。」

軽く照れたように言う彼。

「まあ、言われた、けれど・・・」

私もその時のことを思い出して、更に照れてきた。気持ちを落ち着かせようと、渡されたカップのお茶をぐいぐいと喉に流し込む。

「や、困らせてしまいましたか。気にしないで下さい。」

ぽりぽりと頭を掻きながら、彼は続ける。


「私は私で勝手にあなたを愛すと、それだけです。」

・・・なんだか、おかしい。


「・・・リブ、このお茶、何か入れた?」
「とんでもありません。」
「うそよ、だって、」

なんだか凄く素敵に見えるの、あなたが。

常時笑みを作る彼の顔が、一瞬、固まった。

「・・・や、予想外ですね。嬉しい、ですよ。」

お茶のせいにされるのは少し心外ですけどね。と、もう元へと戻った彼の顔が笑った。

「お茶のせいなの。何も入ってないなら、きっとお茶が美味しいからよ。」

そうでなければ、こんなにも、

「あなたを、好きになるなんて。」

本当に、信じられないわ。


「全く、私も信用されていませんね」

彼は、哀しいです、と全然哀しくなさそうに言う。

「そんなに媚薬入りが良いのでしたら、お飲みになりますか?」
「・・え?」

刹那、目の前が真っ暗になった。

視力が欠落した中、私の感じる感覚は、
唇に押し付けられる柔らかい感触と、そこから流し込まれる甘い、お茶の味。
そしてすぐに、開放された。突然の出来事に頭がくらくらする。

「いかがですか、二ノ姫?」
「な、な・・・っ」


顔に集中したこの熱が治るまで、まだまだ時間がかかりそう。



毒入りティータイム


(どんどん侵されて、しんでしまいそう!)


100812

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