秘密の逢引は、もう何度目かすら分からない。 「いつも、思うの。」 「何をだ?」 小さく呟いた声でさえ、全て拾い上げてくれる彼に、軽く微笑む。 「私はね、あなたの歌がとても好きだわ。」 私の言葉に、彼は複雑そうな笑みでありがとう、と返した。 「あら、あまり喜んではくれないのね。」 「いや、喜んでいる。でも、」 「ならば私の吾妹は、私のことは好きと言ってくれないのか?」 茶化すように笑いながら、でもきっと本気でそう言うあなた。 まあ、とんだ誤解だわ、と、彼にならって茶化すように私は笑って。 「私はね、月読の君。あなたが愛しくて堪らないの。好きなんて言の葉じゃ表せないほどに。」 とてもありふれた紡ぎかたをされたその言の葉だけれど、それでも私たちはまた暖かい絆で繋がる。 「そうだな、私もあなたを愛しく思うよ。あなたの望むことならばどんなことでも叶えたい。」 「嬉しいわ。」 「ああ。」 そしてまた、とても柔らかい時間が、流れる。 でも、あなたは知っているのかしら。 いいえ、私もきちんと分かっていて、こんなことをしているのかしら。 私が、いつか、きっと 『ねえ、月読の君。お願いがあるの。』 私がまだ言いだす勇気の無い言葉。 『どうか、私を、愛したりしないで。』 いつか消えてしまう、泡沫のようなこの私を。 090623 →戻る< |