敦盛×望美 現代ED後






「敦盛さんっ!」

突然、肩にふわりとした重量感を覚える。
後ろから抱きつかれているのだ、というこの状況はすぐに解ったが、解っただけではどうすることも出来ず。
ただ、その状態を受け入れたまま、声の主に応える。

「み、神子・・何だろうか・・・」

その言葉が口から出た途端、しまった、と思った。
慌てて背後の少女の様子を伺えば、不機嫌な様子で眉根をよせていた。

「あ、その・・望美。」

相変わらず慣れることが出来ないその呼び方に気恥ずかしくなり、目を逸らす。
それでも彼女は満足げに、屈託の無い笑顔をこちらへと向けた。

「あのね、敦盛さん―――」




幸せの形



思えば、この世界・・いや、この時空に来てから、約束事が増えたような気がする。
初めは名前で、次は――そうだ、この身が怨霊であることを忘れる、と。
それは神子の頼みと言えど随分と難しいもの。
だが、思い出してしまうのだ。私が己を卑下すると必ず見せる、彼女の哀しげな表情。
だから忘れることは出来なくとも、せめてそういった言動は控えることにした。
そしてそうしているうちに、ふ、と生きているときと同じような感覚になることが増えた気がするのだ。
成長し、いずれは老いてゆくのであろう神子とは違い、僅かな変化しか生じぬこの身だというのに。
それでも彼女の傍に居ると、そんなことを本当に忘れてしまいそうになる。
愚かなこと、なのだろうが。

「・・さん、聴こえてます?」

は、と気づいたとき、彼女の顔があまりにも近くて思わず体を硬直させてしまう。

「み・・望美、すまない・・。もう一度、言って貰っても良いだろうか。」

己の失態を悔やみ申し訳なく思いつつ頼めば、彼女は仕方ないですね、と言って微笑んだ。
こんな些細な出来事でも、この人は何もかも清浄で美しいのだと実感して、愛しく思う。

「この前学校の帰り道に寄り道してたら、小さな公園を見つけたんです!今度一緒に行きませんか?」

「ああ。是非、そうしたいものだ。」

頬、が。この人の傍にいると、頬が思わず緩むことがとても多い。
本当に、私は今満たされているのだ。とても。
ありがとうございます、と飛び切りの笑顔の彼女に、そっと手を伸ばして
ぽすりとその体を己の胸の内に収めれば、抱いた彼女のその身が少しだけ熱を帯びた気がした。

「え、わっ・・敦盛さん!?」

「すまない、だが・・・少しだけ、このまま、良いだろうか。」

そう呟いて、甘い香の御髪にそっと顔を埋めた。

幸せを、今まさに私はこの手に抱いているのだと、そう実感したくて。



(「あ、敦盛、さ…恥ずかしい…っ!」「もう少しだけだ、望美。」「っ!」)



100321

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