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「素晴らしい、ミス・名字。期限までの提出は無理だと思っていたよ。これからは遅刻に気を付けたまえ」

「課題終わったらしいね。リーマスの教え方は上手いでしょ?」

「明日のホグズミード、ゾンコから見たいわ」

課題の結果は二重丸、防衛術の先生が良く出来たと褒めてくれた。食堂で会ったネビル先生に、こっそりルーピン先生の話を耳打ちされた。
友人は今回のホグズミード、ゾンコを特に見たいらしい。私はハニーデュークスでルーピン先生にお土産を買いたい。そう言ったら、ゴーストがチョコを食べれる?と呆れられた。
そうかもしれないけど、甘そうでカラフルなお菓子を二人で眺めるだけでいいの。ルーピン先生は甘い物が好きだから。
同室の友人達がバカねと笑う中、おやすみ、明日は楽しみだね。と布団を被り、ランプを消した。

「は、くっそん!」

友人がベッドサイドのランプをカチリと点けた。窓の外は灰色で、朝の9時を指すというのに薄暗い。雪が降っているのだ。
同室の友人達が同情の目を向けながら、私のベッドを囲んでいる。ぽっぽっと上気する額に、水枕が乗せられた。

「ホグズミード行く〜〜!」

「駄目よ!熱があるじゃない、今回は我慢して」

「お土産買ってくるから、ね?」

「熱があるだけだよ。元気よ、私っ」

「元気でも駄目。雪が降ってるわ」

「・・・・友人〜〜」

「毎晩薄着で天文台に行くからよ」

コートやマフラーに身を包む友人達は、大人しくしてろと言い残し部屋を出て行く。はあ、と熱い息を吐き、楽しみだった週末を惜しんだ。
今日の為に頑張って課題取り組んだのに、ホグズミード行きたかったのに。ぶるりと震える体を恨む。こんな時に限って風邪をひいてしまった。
原因はこの二週間、毎晩薄着で天文台へ通ったから。分かっているけど、分かっているけど腑に落ちない。
熱く水っぽい顔以外は居たって元気だ。バンバンと布団を叩き、ホグズミードに行けない悔しさを放出する。もう、バカバカ!

(もう〜〜!)

こんな子供じみた事で涙が出るなんて、年相応だ。遊園地や繁華街で母親にだだを捏ねて居るのと、良く似ている。
熱い呼吸に任せ、目を閉じる。誰も居ない静かな部屋に、時計の針がよく響く。浅い眠りと深い眠りを繰り返した。
何度目かの目覚めを感じ、瞼を上げる。時計はあまり進んでいない。私は数十秒、ぼう、と時計を見つめる。

「・・・・・・・」

熱を測れば38度2分、酷い高熱ではない筈だ。身を起こし、悪魔と天使の囁きに翻弄する。
再び眠りに付き、皆の帰りを待つ。・・・それかこっそりホグズミードに行く。

(ハニーデュークスだけ、あそこだけで、直ぐに帰れば)

どうしても行きたかったホグズミードだもん。体は風邪でも目は冴えてる。やっぱり行きたい!
悪魔の囁きが買ってしまった。ハニーデュークスだけささ、と行って帰ってくればいい。誰にも気付かれない様にささっと。
そう決まれば、さっそく私はコートを羽織り、マフラーと手袋を着けニット帽を深く被る。

「名前、居るかい?」

「・・・・!!」

「・・・・入るよ?」

すると突然だった、ドアの外からなんとルーピン先生の声。ニット帽を被りながら振り向くと、先生がドアを突き抜けて入って来たのだ。
突然の訪問に私は唖然と口を開ける。荒れた喉の奥が、鈍く痛んだ。

「なんだ?居たのかい」

「ル、ルーピン先生?」

「生徒達がホグズミードに行くのを見ていて。君の姿が無かったからどうしたのかと、ね」

先生は宙を舞いながら、私のベッドの上へ腰かけた。いけない、今から行こうと思っていたのに。
風邪ひいてる事、ばれちゃいけないとニット帽を更に深く被る。

「寝坊しちゃって、今から行こうと」

「?声、なんか変じゃないかい?」

「ね、寝起きですから」

「顔も赤い様な」

「・・・・さっき、冷たい水で顔洗いました」

んーんーと喉を鳴らし、マフラーへ顔を埋める。ルーピン先生は怪しげに私を覗き込む。
目を反らしたら余計怪しまれる?と、私も負けじと先生を見つめ返す。静かな時間が短く長く流れた。内心ヒヤヒヤのドキドキだ。
ここでばれたら駄目だと言われるのは当たり前。私は寝坊したから、今ホグズミード行くのだ。

「そんなに行きたいのかい?」

先生が片眉を吊り上げる。ばれてる?しかし、先生の態度では曖昧で微妙な所だ。彼はポーカーフェイスが上手いし、案外アウトローな所が。
子供の私が、大人の先生をどうにかできるわけ無いのだ。全てを知れる事は無く、何時だって先生が一歩先を歩くのだ。

「行きたいですよ。だから、今から行くんですってば」

「ほんとに?」

「その為に課題がんばったんです」

「そうだった」

先生は呆れた様な息を吐いた。あ、これはバレてる。今回は駄目か、ホグズミード。しょんぼりと項垂れた。しかし、先生の次の言葉で再浮上する。

「それなら早く行きたいだろう?抜け道を知っているよ。セーターは着たかい?靴下は厚手の物を・・・・あと、私も一緒に行こう」