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(ひいい、遅刻!遅刻!)

黒いローブをバサバサと翻し校内を駆け抜ける。足元に絡む長い裾がうっとおしい、誰だこんな布を制服にしたのは。
おかげでつまずいてしまったじゃない、か。

「うわあ!」

石造りの廊下に教科書が投げ出される。膝が廊下にすれるのを感じながら、頭の中は非常に焦っていた。
私は11の時、親元を離れこの地へやってきた。自分が魔女だと知った時、困惑する両親を背に喜んで入学を決めたのだ。
だって因数分解や漢文を習うより、魔法を習う方が絶対に楽しいじゃない。勉強は楽しい方が身に付くもの。私、首席になれるかも。

(やばいよやばいよ。遅刻したら課題が・・・・)

首席になれるかも。そう思いながら入学したホグワーツだったが、ここは日本ではないのだ。
最初の一年は会話するのにも苦労した。ただでさえ、日本のマグル生まれで魔法界については全くの無知だったものを。
魔法界における常識や知識を学ぶ上に、英語も勉強する羽目になったのだ。首席なんて考えた自分が恥ずかしい。
そして元々は勉強も好きではない。小学生の頃だって掛け算の授業中、居眠りをしたり・・・。そう、私は教師にとって少し面倒な生徒なのだ。遅刻はするし居眠りもするし。
私としては真面目にやっているつもりだ。うっかりしてしまうのは性分だ。申し訳ないとは思って居るのよ。
だからこそ次の授業、闇の魔術に対する防衛術。次に遅刻したら課題を増やすと先生に釘を刺されたのだ。

(いたた・・・ああ〜あと三分)

慌てて身を起こし、廊下に散らばった教科書をかき集める。こんな時に限ってペンケースの中身もばら撒いていたり。
闇の魔術に対する防衛術の授業は特に遅刻しやすい。三年生になってから選択授業が増えた為、一緒に行動する友人がこの時だけ居ないのだ。

「お嬢さん大丈夫かい?」

「は、はい!」

「手伝いましょう」

すると背後から男の人の声。あ、拾うの手伝ってくれるんだありがたい。背後の人に礼を言おうと、振り返る。
―ゴロン。

「・・・・・っ!!わあああ!」

男の人の首がごろん、私の膝元に転がって来た。しかも首の切断面を上にして。

「おっと失礼。うっかり首が」

「び、びっくりした!びびっくりした!」

背後の男はほとんど首無しニック。びっくりした胸がバクバク、心臓が喉まで跳ねたよ。拾うの手伝うって無理じゃない。
私は半泣きの一歩手前でやけくそに教科書を拾い集める。もう!本当に驚いたわ!憎いぞニック!

「これは失礼。おっと、お嬢さん授業が始まりますぞ」

「ご親切にどうも!」

ぐしゃぐしゃに教科書を抱き、一目散にスタートダッシュ。ちらりと後ろを振り向けば、ニックが首を腕に抱きながら手を振っていた。
そんな彼は半透明、向こう側の景色が透けて見える。この学校はゴースト達が住む。入学したては彼らの存在に恐怖したものだ、だってトイレの花子さんだから。

(驚かせて〜〜!ニックのばかばか!)

遅刻したらニックのせいだ!



今日の授業は映写機を使った授業だった。窓板は閉められ、教室全体が薄暗い。授業を終えた生徒達がわらわらと動く。
私は机に頭を突っ伏せ、脱力状態だ。友人の友人が止めを刺した。

「羊皮紙5巻分」

「・・・・・・・・・」

「二週間以内」

「はあ〜」

深い溜め息を吐く。結局授業には間に合わず、罰として有り得ない量の課題が。
他の授業の課題もやっとこなしているっていうのに、それに加えて羊皮紙5巻分!それを二週間以内なんて、無理だ。うん。間に合わない。

「範囲は?」

「動物もどきについて・・・・」

「関連の本片っ端しから写せば」

「その作業が骨折れるの!」

ウィ/キペ/ディアに動物もどきの記事さえあれば一気にコピペできるのに。
21世紀にもなって、しかも魔法が使える世界に居るのに、基本アナログな日常。あの広い図書館から分厚い本を探して、それを手作業で引用しなきゃなんて。
考えただけでも気が遠くなりそう・・・・。

「常習犯のつもりはないんだよ!どーして!」

「ぎりぎりまで寝てたり、のんびり準備するから間に合わないの」

「・・・・期限間に合わない場合ってどうなる?」

「さあ?面倒な仕事押し付けられるか、更に課題が増えるんじゃない?」

「友人、手伝って!」

「駄目よ、あなたの為にならないじゃない。まずは自分で」

「ジーザス!」

友達甲斐ないなあ!と愚痴垂れると、友人はやさしく肩を叩きニヤリと笑う。

「来月のホグズミード、名前だけお留守番かもね」

「・・・・友人〜〜」