novel | ナノ

※ツナ視点


オレはまた、めぐりあわせの悪さを恨んだ。よりにもよって何で、恋敵の相談をオレは受けてるんだろう?自分でもよくわからない。べつに、こいつとは特別仲がいいわけでもないのに。

最近あいつがモテてるのは知ってる。鈍感なあいつは気づいていないんだろうけど、オレにはよく、こうして損な役回りがまわってくるから。

となりを歩く男は、すこし不安そうに、なまえのはなしをする。そいつの口からなまえの名前が出るたびにオレはわかり切った苛立ちにかられるのに、そいつは気づかないらしい。

ああもう、勘弁してくれ。


「あのさ、…どうしてそんな大事な話、オレにすることにしたの?」
「え?」


オレが唐突に、おおよそ話とは違うことを尋ねたためにそいつは一瞬戸惑ったようにオレを見た。そしてオレの問いと、返した視線にこめた刺に気づいたのか、ふっと目を据わらせて言った。


「だってツナは、なまえちゃんと幼なじみだろ。何か聞いてないわけ?」
「何か?」
「たとえばほら、好きなタイプとか。好きな人がいるのかとかさ」
「…聞いてない」
「えー、まじかよ?隠してるんじゃないだろうな」
「ないよ」
「互いにそういう話しないわけ?」
「しない」


くり返される質問にただでさえいらいらするのに、そいつの探るような視線は、オレのいらだちをさらに深めた。

知ってたらこんなに思い悩まない。話せるならとっくに告ってる。

幼なじみって立場をみんなうらやましがるけど、それは絶対にいいもんじゃないんだ。曖昧で分かりづらくて、誰よりも近いのに、誰よりも遠い。

近すぎて恋愛対象外、ってことばをみんな知らないからうらやましがれるんだろう。もし今あいつとの立場を変えられるならオレは、今からあいつの前に現れる男になりたいくらいだ。


「なんだ、そうなのか」


とたんにそいつは興味をなくしたみたいだった。ここまであからさまなやつも珍しいけど、なまえの情報目当てで話しかけてくるやつはみんなこんなもんだ。


「あ、じゃあさ、悪ィけどもうひとつ。いまさら聞くまでもないけど、なまえちゃんってフリーだよな?」


皮肉混じりのことばに、…とっさに返せなかった。たぶんこんなオレを、リボーンはマフィアらしさの欠片もねえって笑うんだろう。


「………ああ、そうだと思うよ」


こうやって牽制されるのにももう慣れてしまったオレは男として腰抜けなのかもしれないけど、 それでも、…

明かされた話は恋バナ
(……それでも、キミが好きなんだ)
Thanks;さよならワルツ
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